【英国】財務相、歳出削減策を発表 前政権予算「220億ポンド超過」

AI要約

英国のリーブス財務相は、緊急の歳出削減策を発表し、220億ポンドの歳出超過に対処する方針を示している。削減策には高所得者への補助停止や計画の見直しが含まれており、歳出削減と歳入拡大を図る取り組みが行われる。

新政権は医師や教師などの賃上げを計画しており、予算難決断が必要であることを認識している。財政状況が厳しい中、歳出と福祉に関する重要な決定が迫られている。

前財務相は歳出超過指摘を否定し、増税を主張する新政権の姿勢を非難しているが、予算責任局は情報の透明性に疑念を示唆し、財政見通しの手順の見直しを検討している。

 英国のリーブス財務相は29日、緊急の歳出削減策を発表した。保守党前政権から引き継いだ今年度予算は220億ポンドの歳出超過になると指摘した上で、今年度に55億ポンド、来年度に81億ポンド削減する方針を示している。10月30日には、追加の削減策を盛り込んだ秋季予算案を発表する予定だ。

 今回の削減策には、高所得の年金受給者に対する暖房費の補助の支給を停止することで年間約15億ポンドを節減する案が含まれる。また、各省庁のコンサルタント契約の見直しなどで30億ポンドを絞るほか、ジョンソン元首相が打ち出した2030年までに病院40カ所を新設する計画については、「財源の裏付けがなく、スケジュールも実現不可能」として大幅に変更することを決めた。

 さらに、一部の道路建設を取りやめるほか、来年から高齢者の介護料金に上限を設ける計画も不可能と判断。また、不法移民のルワンダへの移送計画を中止することで、今年に8億ポンド、来年に14億ポンドの支出がカットできるとしている。

 一方、歳入の拡大に向けては、公約通り来年1月から私立の教育機関にVAT(付加価値税)を課す。石油・ガス会社を対象とした超過利潤課税は、11月1日から税率を3ポイント引き上げて38%とするほか、投資控除のルールを厳格化し、課税期間も30年3月末まで延長する。また、未公開会社の経営幹部や、非居住者扱いの富裕層への課税の取り締まりを強化する計画も進める。

 新政権は若手医師や教師、警察官、刑務所職員などの賃上げを予定しており、これにより94億ポンドの追加負担が生じる見通しだ。

 秋季予算案については、リーブス氏は「歳出、福祉、税金で難しい決断を下すことになる」と述べた。

 これに対し、前政権の財務相だったハント影の財務相は、220億ポンドの歳出超過との指摘は「偽り」と批判。新政権が国民に増税を受け入れさせるための手段だと批判している。ただ、予算責任局(OBR)のリチャード・ヒューズ局長は、3月にOBRが財政見通しを作成する際にハント氏が提出した情報は「透明性と信頼性に懸念がある」とした上で、予算案発表時の財政見通しの策定手順を見直す方針を示した。