パリ五輪 警備のもろさ露呈、テロ対策見直しも 高速鉄道破壊行為、同一組織の計画犯行か

AI要約

パリ五輪ではテロを阻止する対策が課題となっており、高速鉄道TGVの破壊行為が警備の脆弱性を露呈した。警備を見直す必要がある。

破壊行為はパリ市内ではなく、郊外で発生し、警備が手薄だった可能性が指摘されている。テロ対策の強化が求められている。

五輪前からテロ計画の動きがあり、イスラエル選手への脅威もある。広範なテロ対策が必要とされている。

【パリ=板東和正】26日開幕したパリ五輪ではテロを阻止する対策が最大の課題だ。フランスの高速鉄道TGVの鉄道網への大規模な破壊行為は仏政府が過去最大級とされる警備を敷いた中で起きた。万全とみられていた警備の脆弱性が露呈したことで態勢の見直しを迫られる可能性もある。

■破壊行為、警備手薄な郊外狙う

TGVの3路線で25日夜から26日未明にかけて破壊行為が起きた事件では、パリ検察が組織犯罪の疑いなどで捜査。捜査関係者は同一組織による計画的な犯行との見方を示した。極左集団や過激な環境団体の犯行との見方も浮上している。

仏政府は26日のセーヌ川での開会式のため、18から川沿いの約10キロの立ち入りを厳しく規制した。当日は自国の警官や兵士のほか、他国から治安要員が応援に駆け付け飛行禁止空域も設定。「平時のフランスで過去最大」(仏メディア)の警備態勢を敷いた。

だが、厳重警備は原則としてパリに限られ、破壊行為は警備が手薄だったとみられるパリ郊外で起きた。犯行に関与した組織はパリ市内を避け、パリと国内の主要都市をつなぐTGVを標的にすることで、交通網に打撃を与えた可能性がある。

パリ五輪は国内外から1500万人以上の観光客が見込まれる。パリ郊外の会場でも競技が行われ、郊外とパリの移動も増加する見通しだ。欧州のテロ対策の専門家は「仏政府はパリ一極集中ではなく、フランス全体を網羅する防衛対策を強化する必要がある」との見方を示した。

■「ミュンヘンと同じことする」

国内では開幕前からテロを画策する動きが相次いで確認されている。仏警察は25日、テロ計画に関与した疑いがあるとして18歳の男を拘束したと公表。21日にも、五輪期間中に妨害行為を企てた疑いで露連邦保安局(FSB)の要員とみられるロシア人の男が逮捕された。

中東メディアによると、イスラム原理主義組織ハマスとの戦闘を続けるイスラエルの選手が「五輪に出場するなら(われわれは)ミュンヘンの時と同じことをする」との脅迫メールを受信した。1972年のミュンヘン五輪ではパレスチナ過激派の襲撃によってイスラエル選手やコーチ計11人が殺害された事件があった。テロの脅威は広範囲に及び、難しい対応を迫られる。