中国で深刻だったPM2.5、今は別の国が世界最悪 専門家「寿命が6.8年短くなっている」

AI要約

大気汚染が700万人もの命を奪う現実と、その特に心配される影響を受ける子どもたちにスポットを当てるバングラデシュの状況。

バングラデシュではPM2.5濃度が世界最悪であり、肺疾患や心臓病などのリスクを増加させる可能性がある。WHOによると、大気汚染によって年間700万人が亡くなっている。

特に子どもは影響を受けやすく、呼吸器系の疾患で受診する子どもが増加傾向にある。幼い子どもや既にアレルギーを持つ子どもなどが深刻な状況にある。

中国で深刻だったPM2.5、今は別の国が世界最悪 専門家「寿命が6.8年短くなっている」

あるのが当たり前、ないと生きられない――。そんな存在である大気が、毎年700万人もの命を奪っている。大気汚染が2023年に「世界最悪」とされたのが、バングラデシュ。中でも特に影響が心配されるのが、子どもたちだ。(荒ちひろ)

警報が出るほどの熱波に見舞われた5月上旬、バングラデシュの国立ダッカ子ども病院の受付で、ぐったりとした赤ちゃんが家族に抱かれ、順番を待っていた。私立病院に比べて格段に費用が安く、優秀な医師が集まるとあって、連日、受診に訪れる親子連れで廊下や建物の外までごった返している。

隣県からやってきた母タフミナさん(26)と父シシールさん(29)の長男タシュリフちゃん(7カ月)は、生後3週間から咳(せき)が止まらず、地元の病院で肺炎と診断された。いくつも病院を転々としてきたが、一向に症状は良くならず、ここならば治るかもしれない、と訪れたという。

「死んでしまうのではないかと思うくらい咳がひどく続き、眠れずミルクも飲めない。心配でたまらない」とタフミナさん。「良くなるよう、祈ってください」と我が子を見つめた。

大気汚染の原因である微小粒子状物質(PM2.5)の濃度が「世界最悪」とされるのがバングラデシュだ。

スイスの空気清浄機メーカー「IQAir」の2023年の調査によると、データがある134カ国・地域別でワースト1位(人口を加味した年間平均で1立方メートルあたり79.9マイクログラム)。パキスタン(同73.7)、インド(同54.4)と、南アジアの国が続く。

PM2.5は、肺の奥深くまで入り込みやすく、ぜんそくや肺炎などの呼吸器疾患や、脳卒中や心臓発作などのリスクを高めるとされる。世界保健機関(WHO)は、大気汚染によって年間700万人が亡くなっていると推計する。

米シカゴ大エネルギー政策研究所は同年、バングラデシュでは寿命が国平均で6.8年、ダッカ近郊では8.3年、大気汚染で短くなっていると推計した。

臓器や免疫システムが未発達の幼い子どもは、特に影響を受けやすい。ダッカ市内にある山形ダッカ友好総合病院(山形大学医学部に留学した医師らが創立)の呼吸器内科医アブドゥラ・マスードさん(37)は「ぜんそくや気管支炎など大気汚染に関連する疾患で受診する子どもは、年々増加傾向にある」と話す。

患者の一人、マビシャ・ザマンさん(8)は、5歳のころからアトピーやアレルギーに悩まされてきた。特に乾期(11~3月ごろ)は、咳やくしゃみ、皮膚のかゆみが出やすく、ひどい時には呼吸が苦しくなるという。 砂埃や煙の原因となっている街中や道路脇のごみを指摘し、「街をきれいにする必要があると思う」と訴えた。