米トランプ政権復活なら台湾危機も 日本は防衛力増強で備えよ エモット英誌元編集長

AI要約

米大統領選でのトランプ氏の消極的な姿勢により、共和党政権が復活すれば中国の台湾侵攻を誘発しかねない懸念がある。

米大統領選において、ハリス副大統領が有力候補となり、勝つ確率を60%と予想されている。

エモット氏は、防衛力増強による危機抑止の重要性を強調し、憲法9条改正を急ぐべきだと提案している。

米トランプ政権復活なら台湾危機も 日本は防衛力増強で備えよ エモット英誌元編集長

知日派として知られる英誌エコノミスト元編集長、ビル・エモット氏が23日、産経新聞のインタビューに応じた。米大統領選でトランプ前大統領が台湾防衛に消極的な姿勢を示していると指摘し、共和党政権が復活すれば、中国の台湾侵攻を「誘発しかねない」と懸念を示した。アジアの紛争抑止では、日本の防衛力が「極めて重要になる」と指摘。憲法9条改正を急ぐべきだとも述べた。

■ハリス氏勝機「60%」と予想

米大統領選ではバイデン大統領が撤退し、ハリス副大統領が民主党の有力候補に浮上している。エモット氏はトランプ、ハリス両氏の対決となれば「ハリス氏が優勢。勝つ確率は60%」と予想した。

その理由について、「衰弱したバイデン氏に不安を抱き、仕方なくトランプ氏に投票しようとした浮動票を取り戻せる。米国では新顔で若く、変化をもたらせる候補が有利」と述べた。トランプ氏は銃撃事件で注目を集めたが、「支持率に変化はなかった。当時の興奮は長く続かない」として、事件の影響は限定的だと指摘した。

アジア外交についてエモット氏は、民主、共和両党は日韓などとの同盟を重視する方針で同じだが、「バイデン氏は台湾防衛で米国が軍事介入する意思があると明言したのに対し、トランプ氏は言わない」と違いを強調した。トランプ政権が復活すれば、「習近平国家主席は『今こそ行動の時』と決断しかねない。きわめて危険だ」と警告し、米中の軍事衝突に発展する可能性も排除できないと述べた。

■AUKUS解散の懸念も

また、バイデン政権が構築した米英豪3カ国の安全保障枠組みAUKUS(オーカス)についても、トランプ政権なら解消に動くと予測した。「共和党タカ派はオーストラリアは中国から遠く、対中抑止への貢献が薄いと考えている」と説明した。

日本についてエモット氏は、政府が2022年、防衛費を27年度に国内総生産(GDP)比2%に増やす方針を閣議決定したことを高く評価した。米外交の先行きが不透明になる中、日本が防衛力を増強しながら、インドネシアやフィリピンなど東南アジア諸国と関係を深めることが危機抑止で重要だと主張した。「日本は憲法の制約が、抑止への貢献で弱みとなっている。どこまで部隊展開できるのか、常に疑念がつきまとう」と指摘。憲法改正を優先課題とするよう促し、「今後5年間」で取り組むべきだと訴えた。

エモット氏は、新著「第三次世界大戦をいかに止めるか 台湾有事のリスクと日本が果たすべき役割」(扶桑社)の出版にあわせて来日した。東京都内でインタビューに応じた。(三井美奈)