中国による侵攻を想定、台湾で大規模軍事演習始まる 「脅威増大」で実戦化へ変革

AI要約

台湾軍の大規模軍事演習「漢光」が中国軍の脅威増大を受けて実戦化を図り、実際の戦争に備える取り組みが進められている。

演習では、事前のシナリオを削減し、部隊間の通信断絶や分散型指揮統制能力の検証などが行われる。

中国軍に扮した部隊を本来の防衛任務に戻すなど、演習の変革が進められている。

中国による侵攻を想定、台湾で大規模軍事演習始まる 「脅威増大」で実戦化へ変革

【台北=西見由章】中国による軍事侵攻を想定した台湾軍の大規模軍事演習「漢光」が22日、台湾各地で始まった。パフォーマンス性の強い実弾演習などを大幅に減らし、実際の戦争に各部隊が対応できるかどうかを検証する「実戦化」に踏み切る。台湾の軍事専門家によると、中国による侵攻の脅威増大が変革の背景にある。演習は26日まで。

国防部(国防省に相当)によると、今年から事前のシナリオに基づく「実演」的な演習を削減。各部隊と軍中枢間の通信が断絶した状況を想定し、現場の指揮官が交戦規定に基づいて独自に作戦を遂行する「分散型指揮統制」能力を検証する。演習は深夜・早朝も含めて24時間体制で行う。

さらに従来、仮想敵の中国軍に扮(ふん)していた陸軍の空挺(くうてい)部隊や海軍陸戦隊を、本来の防衛任務に戻す。

政府系シンクタンク「国防安全研究院」の沈明室・国家安全研究所長は、演習の変革を行う背景について、ロシアによるウクライナ侵略により独裁国の侵略が起こり得ると証明されたことと、中国の習近平国家主席が『台湾問題の解決』を強調し、人民解放軍に侵攻の準備を整えるよう要求していることを挙げる。「もし今、明日、来年に戦争が起きた場合、台湾は防衛作戦の準備ができているのか検証するのが今回の演習の目的だ」と述べた。

演習を「シナリオなし」としている点については「現場の部隊に何時何分にどこで何をせよと事前に指示するのではなく、随時、敵軍の動きや状況を知らせて任務にあたらせる。実際にシナリオはあるが、部隊への『ネタバレ』がないということだ」と説明した。

「分散型指揮統制」について沈氏は「戦争では指揮命令系統の寸断が起こりうる。こうした状況下で現場の部隊長らが敵軍の攻撃に直面した際、軍上層部に指示を仰がずに独立して作戦を遂行できるかを検証する」と解説した。

漢光演習は22日、中国軍による緒戦のミサイル攻撃を想定して、軍機を東部花蓮の佳山基地にある山中の格納庫に退避させるなどの「戦力温存」を実施。一般市民を対象とする防空演習「万安」も同日始まった。23日には佳山基地の滑走路で突貫修繕工事の訓練を行うほか、台北・松山空港では中国軍部隊の降下を想定した対空挺作戦を実施する。24日には離島、澎湖諸島での対着上陸作戦などが予定されている。