トトロみたいな「空想上の日本」を鎌倉に作り上げてしまった米国人

AI要約

米国人が鎌倉の山に古民家や廃寺を移築し、独自の大屋敷を作った物語

建物の保存活動や自然中心の屋敷の様子、持ち主の背景に迫る

ヘイウッド氏の異文化体験や日本への愛情、米国での活動も紹介

トトロみたいな「空想上の日本」を鎌倉に作り上げてしまった米国人

鎌倉の山に日本各地から古民家や廃寺を移築し、唯一無二の大屋敷を作ってしまった米国人がいるという。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が現地を取材した。

鎌倉の街を望む山で、ある日の午後、ブライアン・ヘイウッド(57)が、彼の新居に最後の仕上げを施す12人の職人を見守っている。

咲き誇る山桜の木々に縁取られたこの広大な高台の屋敷からは、西に相模湾が見え、遠くには富士山も見える。ヘイウッドは言う。

「車で入ってきたとき別世界に連れてこられた気分になってもらいたいのです」

東京から50キロほど離れた海沿いの街にある、1200坪ほどの敷地は、交渉と保存の末に勝ちとられたものだ。ヘイウッドが「楠山(しょうざん)」と呼ぶ敷地には、築数百年の木造家屋が3棟、築150年の廃寺、その他の文化財が興味深く混合して建っている。すべて慎重に解体され、もともと建っていた場所から移され、5年かけて再建されたものだ。

それぞれの美意識や基本的な設計は、最大限に保たれている。だが、床下暖房などの現代的な設備が加えられ、高い天井に大きい扉と西洋的なサイズも採用されており、持ち主の米国人の存在をうかがわせる。

ヘイウッドは楠山を保存活動として捉え、それは自分の保守的な世界観につながるものと見ている。

いくつかの建物は所有者から放棄されたか、取り壊されるはずだったものだ。所有者らはそうした建物を、日本政府により「文化財」として規制されるよりも、手放すことを選んだのだ。

ヘイウッドは鎌倉で自然中心の屋敷を完成させつつ、本拠地の米国ワシントン州では気候変動関連の法律を撤廃する闘いの先頭に立っている。その闘いは、「立派な事業に見せかけているけれども、実際にはお金を必要としている人から取り立て、何の益も提供しない政府介入」としか思えないことに反対するものだとヘイウッドは言う。

アリゾナ州で生まれ、1980年代に「末日聖徒イエス・キリスト教会」(訳注:通称「モルモン教」)の宣教師として初めて日本にやってきたヘイウッドは言う。

「着いたその日から寺や民家や庭に心奪われました。大阪で訪れた田舎の古民家には、盆栽が外に何列も並べられていて、そのいくつかは100歳だと教えてくれました。つまり、何世代にもわたって育てられ、美しさが守られてきたということです。それは米国西部では未聞の概念でした」

何十年も日本の企業に携わり、投資してきたヘイウッドは、ワシントン州に所有する5万坪近い農場と対になる伝統的な家を日本にも建てたかったという。ヘイウッドはいま、シアトル郊外を拠点とする、日本に特化した投資顧問会社のトップを務めている。