外国人観光客誘致に本腰の中国。14カ国のビザ免除で「旅行者急増」も、決済アプリに課題

AI要約

中国政府は2023年12月以降、欧州諸国に対して短期滞在のビザなし渡航を認め、外国人旅行客の誘致に力を入れている。ビザ免除により予約が急増しているが、外国人が戸惑う中国独特のアプリ決算方法が課題となっている。

中国政府は欧州諸国や東南アジア諸国を中心にビザ免除措置を実施し、観光客の受け入れを拡大している。外国人観光客の数はコロナ禍前に比べてまだ少ないが、増加傾向にある。

中国は観光業振興のため外国人旅行者の誘致を行っているが、政治的緊張や安全面の懸念、デジタルインフラの課題など、さまざまなハードルが存在する。

外国人観光客誘致に本腰の中国。14カ国のビザ免除で「旅行者急増」も、決済アプリに課題

中国政府は2023年12月以降、主に欧州諸国に対して相次いで短期滞在のビザなし渡航を認め、外国人旅行客の誘致に本腰を入れている。ロイター通信は、ビザ免除により多くのインバウンド客が中国に押し寄せていると伝えた。ただ、大きな課題の一つは、外国人が戸惑う中国独特のアプリを使った決算方法だという。

中国最大のオンライン旅行代理店トリップドットコムの最新データによると、6月24日時点でビザ免除措置が適用されているフランス、ドイツ、イタリア、マレーシアなど12カ国(現在は14カ国)を中心に予約が前年比150%と急増。7月と8月の予約も増加が見込まれている。

「この傾向に大変興奮している。中国に来る前、観光客の多くは中国を誤解していたが、到着後、上海などの都市では非常に安全で清潔だと感じている」とトリップドットコムのジェーン・サンCEO(最高経営責任者)はロイター通信に語った。

中国政府は2023年12月以降、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オーストラリア、ニュージーランド、ポーランドなど欧州諸国を中心に、観光客にビザなしの入国を許可している。また、タイやシンガポールなど東南アジア諸国も、ビザなし渡航を促進するため中国と協定を結んでいる。

6月にはオーストラリアとニュージーランドからの旅行者に対するビザなし渡航措置も発表。その週にはツアーの売り上げが前週比133%アップしたと、旅行代理店イントレピッド・トラベルのオーストラリアとニュージーランドの営業・マーケティング担当ゼネラルマネージャー、イヴェット・トンプソン氏は指摘。「コロナ禍を終えた今、ビザ取得という面倒さをなくすのは良い動き」と述べた。

2020年初頭に新型コロナウイルスの感染拡大で中国政府は国境を閉鎖。2023年初めになってようやく外国人渡航者の受け入れを再開した。その後、不動産バブルの崩壊など国内経済は悪化。弱い内需の下支えのため、政府は外国人向け観光業に着目した。

15日以内の滞在ならビザなし渡航を可能にする措置を段階的に実施し、これまで欧州を中心に14カ国が対象になっている。これはコロナ禍前まで日本など3カ国だけだったため、大幅な緩和だ。

だが、それでも中国を訪れる観光客の数はパンデミック前よりはるかに少ない。

中国の公式観光データによると、コロナ禍前の2019年は4910万人の外国人が訪中し、その3分の1以上が観光やレジャー目的で、同年の外国人旅行者がもたらした観光収入は1313億ドル(約20兆5500億円)にも達した。

一方、2024年上半期に中国に入国した外国人の数は1460万人で、コロナ禍前よりはるかに少ない。国家移民管理局によると、そのうち850万人がビザなしで入国し、全体の半分強を占めている。中国政府は国際観光収入データを2019年以降公表していない。

航空業界向けのデータ分析や予測サービスを提供する企業シリウムによると、中国へのフライトが最も多い上位3カ国(タイ、日本、韓国)でも、コロナ禍前の2019年6月と2024年6月を比較すると、中国行きの便は7割強~8割にとどまっている。ちなみに、もともとビザ免除だった日本は、コロナ禍で同措置が停止されて以来、再開のめどは立っていない。

中国の旅行業者は来年、外国人観光客のさらなる増加を見込んでいるが、今後、誘致を促進するためにはビザ免除だけでは不十分だと専門家は指摘する。

ロイター通信によると、政治的緊張や批判を許さない政府、西側メディアが報じる中国の好戦的な姿勢により、同国を敬遠する外国人観光客が少なからずいる。また、先月発生した外国人に対する2件のナイフを使った殺傷事件も外国人への安全面の懸念を引き起こしたと伝えた。

さらに中国は、円安の影響で加熱する前代未聞の観光ブームを迎えている日本とも競争しなければならない。

「多様な景観や歴史、帝政時代の北京と未来的な上海のコントラストなど、中国を訪れる理由については語れば語るほどネガティブなイメージは消えると思う」とイントレピッド・トラベルのトムプソン氏。

そんな中、ロイター通信は、外国人渡航者にとってもう一つの潜在的なハードルは、中国のデジタルインフラだという。

交通機関の乗車券からレストラン予約、観光地の入場券まで、あらゆる支払いは中国独自の「WeChat」や「Alipay」など、現地決済アプリにリンクされたQRコードで行われる。外国の銀行カードをこれらのアプリにリンクすることは可能だが、システムと言語の壁は外国人観光客には困難で、課題となっている。