<プーチンの核威嚇はただの脅し文句か>ウクライナの反撃で損傷するロシアが暴挙に出る可能性は?

AI要約

プーチンが中距離核ミサイルの生産とNATO近隣諸国への配備可能性を示唆

プーチンの威嚇は曖昧で、交渉にオープンなシグナルも含まれている

プーチンの発言は西側との対立を煽るタイミングであり、米露間の核軍備管理が困難に

<プーチンの核威嚇はただの脅し文句か>ウクライナの反撃で損傷するロシアが暴挙に出る可能性は?

 ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙のデービッド・サンガー記者らが、6月28日付け解説記事‘Putin Vows to Make New Nuclear Missiles and to Weigh Placing Them Near NATO Nations’で、プーチンがかつて中距離核戦力(INF)全廃条約で禁じられていた中距離核ミサイルを生産して北大西洋条約機構(NATO)近隣諸国などに配備する可能性を示唆しているが、これは西側との緊張を一層高めウクライナとの戦争で優位に立とうとする試みに過ぎないとして、言外に冷静に対処すべきことを指摘している。主要点は以下のとおり。

 6月28日、プーチンはロシアが新たに核搭載可能な中距離ミサイルを生産した上で、欧州NATO諸国やアジアの米同盟国(複数)を射程内に収める範囲に配備するかどうかを判断すると表明した。

 プーチンの威嚇は曖昧な表現でなされていた。核兵器配備と言っても、そのタイムテーブルについて何も語っておらず、また中距離ミサイルを欧州やアジアの演習で使用しているとして米国を非難しているが、これは自分としては交渉にオープンであるとのシグナルを送っているようにも見える。

 だが今回の発言は、まさにここぞというタイミング、つまり英国やフランスでの選挙の直前、また創設75周年を迎えるNATOサミットの数日前というタイミングでなされている。プーチンは、米国やアジアの同盟諸国を警戒させた北朝鮮訪問から2週間と経たないうちに、西側との対立の緊張を一層高めようとしたものと思われる。

 米国は2019年、トランプ大統領の時代にINF条約から脱退した。米露間で半世紀以上にわたり交渉されてきた核軍備管理の時代は、一連の条約からの脱退で終わりを告げた。今残されているのは新戦略兵器削減(新START)条約だけで、これは26年2月に失効する。

 プーチンは過去(米国が脱退したあとの)5年の間、いつでも自身の中距離兵器を強化する計画を表明することができた(が、しなかった)。よって今このタイミングでプーチンがその決定を下したことは注目に値する。

 この間、米国はアジアにおいて若干の中距離兵器を配備するための初歩的な動きを開始したが、それは究極的には増大する中国の核戦力に対抗するものであって、欧州には恒久的な再配備は行っていない。