イラン最高権力者の後継問題 聖地では父子継承に否定的 千夜一夜

AI要約

イランにおける最高指導者後継者問題について、ハメネイ師の後継者候補や反米保守派の動向が焦点となっている。

ハメネイ師の息子であるモジタバ師が後継者として取り沙汰されているものの、イスラム教の伝統に反し懸念を持つ声も多い。

イランの政治は反米保守路線が継続される見通しであり、その主導権を握るのはイラン革命防衛隊などの組織とされる。

イラン最高権力者の後継問題 聖地では父子継承に否定的 千夜一夜

大統領選取材のため6月下旬にイランに出張した際、イスラム教シーア派の聖地がある中部コムに足を延ばした。最高指導者ハメネイ師の後継候補とみられた反米保守強硬派、ライシ大統領が5月にヘリコプター墜落で事故死し、後継者についての見解を聖職者らに尋ねるためだった。

内政、外交の決定権を握るハメネイ師は85歳の高齢で、反米保守路線の次世代継承を目指しているとも聞く。海外のメディアでは、ハメネイ師の息子のモジタバ師の名前が後継として取り沙汰される。ただ、コムでは息子が後を継ぐことに否定的な見方が多かった。

理由の一つは権力の父子継承になることだ。初代最高指導者ホメイニ師も、「君主制と世襲制は、イスラム教がそもそもの初めから、決定的に排除してきた」(清水学訳「ホメイニ わが闘争宣言」)と著書で戒めている。

一方、テヘランのある評論家は、「誰が後継者になるかは重要ではない。最も強くて、団結しており、資金力がある組織が国政を取り仕切るからだ」と述べ、反米の砦(とりで)である軍産複合体のイラン革命防衛隊の名を挙げた。

彼の読み通りなら、イランの反米保守路線はさらに続くことになる。自由と民主化を求める人々の声も封殺され続けるのだろうか。(佐藤貴生)