【仏国民議会選】「極右勝利」を阻止するも「与党連合の勝利」もなし、五輪目前で「嫌われ者ぶり」発揮したマクロン

AI要約

フランス国民議会選で極右連合は左派連合と中道連合に次ぐ3位に沈む。

国民連合は1000万票超えでマクロン大統領を批判し、勝利を先延ばしとする。

極右連合の得票率が上昇し、マクロン大統領に対する批判票となるものの、国民連合が市民権を確立。

 (国際ジャーナリスト・木村正人)

■ ルペン氏「勝利は先延ばしにされただけ」

 [ロンドン]6月30日と7月7日の2回投票が行われたフランス国民議会選(下院、定数577)で、欧州議会選や第1回投票で首位に立った「国民連合」(旧国民戦線)の極右連合は“急造”左派連合とエマニュエル・マクロン大統領の中道連合の野合で142議席の3位に沈んだ。

 強硬左派「不服従のフランス」・社会党・緑の党・共産党の左派連合が178議席で首位。マクロン大統領の中道連合は150議席で2位。国民連合のマリーヌ・ルペン氏の秘蔵っ子ジョルダン・バルデラ党首が首相になるのは防ぐことはできたものの、誰もが予想しない結果となった。

 ルペン氏は「私たちは国民議会議員の数を倍近く増やした。トレンドは上昇を続けており、私たちの勝利は先延ばしにされただけだ。この国を統治するのに値するのは決選投票で1000万票(得票率37%)を獲得してトップに立ったわが党だけだ」とX(旧ツイッター)に投稿した。

 「マクロンはわれわれの勝利を奪おうとし、左派連合のプログラムを阻止しようと企んでいる。唯一の主権者、国民がマクロンを屈服させなければならない。なぜ首相官邸に向かって大行進しないのか」とマクロン大統領の命で居座るガブリエル・アタル首相への抗議活動を呼びかけた。

■ 国民連合の極右連合は1000万票超え

 「得票数でも議席数でも少数派の極左(不服従のフランス)は選挙での正当性がないにもかかわらず、権力を行使して自らのプログラムを押し付けようとしている。左派連合の議員を当選させたマクロンはこうした受け入れがたい要求に対して重い責任を負っている」(ルペン氏)

 得票数ならルペン氏の言う通り、フランスの民意はマクロン大統領でも、左派連合でもなく、国民連合にある。国民連合を柱にした極右連合の得票率は第1回投票の33.2%から決選投票で37.1%に跳ね上がった。得票数は2回とも1000万票を超えた。

 そもそもマクロン大統領が国民議会を無謀にも解散したのは欧州連合(EU)欧州議会選(6月6~9日、フランスの定数81)でルペン氏にダブルスコアの大敗を喫したのがきっかけだ。国民連合31.4%(30議席)、エリック・ゼムール氏の再征服グループ5.5%(5議席)と躍進した。

■ 第5共和政の終わりの始まり

 極右勢力は過去最高の得票率を記録した。再征服の名簿登録順位1位はマリオン・マレシャル氏。ジャン=マリー・ルペン初代国民戦線党首の孫娘で、マリーヌ・ルペン氏の姪。マリオンは、「脱悪魔化」と称して父親の初代党首を切り捨てソフト化路線に走ったマリーヌと袂を分かった。

 2年前の国民議会選決選投票で国民連合が集めた票数は359万票弱。それが今回1000万票超えである。いくらマクロン大統領への批判票とはいえ、国民連合は完全に市民権を得た。しかしナチスの空軍帽をかぶった写真が出てきて立候補を取り下げたり、人権意識の薄い発言で失笑を買ったりする不手際もあった。