外信コラム 米小学校の銃乱射事件から2年、遺族の思い 永久閉鎖された校舎は今 

AI要約

2022年5月に銃乱射によって児童19人と教師2人が殺害された南部テキサス州ユバルディのロブ小学校前を訪ね、風化していない犠牲者の姿や遺族の思いを伝えた。

地元では永久閉鎖された学校の前に犠牲者の顔写真・名前を記した21の小さな十字架が並び、銃犯罪の悲惨さを訴える〝聖地〟として見学者が訪れている。

事件により責任追及が続き、議論された銃規制強化の動きは下火となりつつあるが、遺族は再出発し日常を歩んでいる。

外信コラム 米小学校の銃乱射事件から2年、遺族の思い 永久閉鎖された校舎は今 

2022年5月に銃乱射によって児童19人と教師2人が殺害された南部テキサス州ユバルディのロブ小学校前を先月訪ねた。発生直後に現場取材し、約4カ月後の同年9月に再訪。2年が経過した今回が3度目だ。

連邦銃規制法成立の契機ともなった事件は風化していなかった。犠牲者の姿を記憶にとどめる地元の使命感が伝わってきた。

永久閉鎖された学校の前は一人一人の顔写真、名前が記された21の小さな十字架が並ぶ。銃犯罪の悲惨さを訴える〝聖地〟に次々と見学者が訪れ、子を持つ女性は「遺族のつらさを思うと悲しい」と漏らした。

中心部の商店街。ほほ笑む女児の絵が壁一面に描かれた雑貨店は昨秋から両親が経営する。エリアナさんを失った父親のガルシア・スティーブンさん(33)は「娘のレガシー(遺産)をこの店で守りたい」。遺族は再出発し日常を歩んでいる。

責任追及も続く。駆けつけた警察官らが1時間以上、廊下に待機し突入しなかった「想像を絶する失態」(警察OB)で、当時の幹部は刑事告発された。一方で事件が原動力となった銃規制強化の議論は選挙の年なのに下火となった。現職大統領の息子が銃の不法購入で有罪評決を受ける時代でもある。

「政治にはかかわりたくない」とスティーブンさん。複雑な遺族の思いを代弁していた。(渡辺浩生「ポトマック通信」)