フォーエバー21とシーイン それは「ガラケーと最新のスマホを比べるようなもの」

AI要約

フォーエバー21が、急激な市場変化に対応できず、競争力を失いつつある。

競合のSheinとの提携によりフォーエバー21は一時の救済を図っているが、長期的な展望は不透明。

業界の専門家は、フォーエバー21の将来は所有者の財務状況に左右される可能性が高いと見ている。

フォーエバー21とシーイン それは「ガラケーと最新のスマホを比べるようなもの」

フォーエバー21が、またも経営に苦戦している。

同社の以前のライバルは、同じくモールなどに複数の店舗を持つH&MやZARAだった。

しかし時代はかわり、事業再建の最大のライバルは、中国ブランドのShein(シーイン)やTemu(ティームー)などの「超ファストファッション」になり、同社は「徹底したデジタル化で効率とスピードを重視する超ファストファッションとの競争についていけていない」と報じられている。

「もはやそのスピードには太刀打ちするのはほぼ不可能です」と、関係者は米メディア「CNBC」に語っている。

「約20年前のブランドと、これらの新しいオンデマンド製造の超ファストファッション企業を並べるのは、2000年代のガラケーと最新のiPhoneを比較するようなもの」

「スピードから扱うアイテム数まで、何もかもが違う」

同社を共同所有する米オーセンティック・ブランズ・グループ(ABG)のCEOのジェイミー・ソルターは、2024年1月に開かれたICRカンファレンスで、こう語った。

フォーエバー21の買収(2020年)は自身のキャリアの中で「おそらく最大の間違い」だったと。

買収前に「シーインやティームーの脅威の巨大さを十分に認識できていなかった」。

そんな競合のSheinと2023年にパートナーシップを結んだ理由についても「我々は彼ら(Shein)に勝てない。彼らのサプライチェーンは凄すぎる」などと明かしている。

このパートナーシップにより、シーインはフォーエバー21の店舗でポップアップを開催した。また、今後はフォーエバー21の店舗で商品の返品もできるようになる予定だ。

一方、フォーエバー21もシーインの製造ラインと販売システムを使って、両社のコラボ商品の販売を始めている。

この関係は「シーインの米国での人気を加速させるのに役立っただけでなく、低迷していたフォーエバー21の店舗への客足を増加させるなど新たな命を吹き込むのにも役立った」と、米誌「フォーチュン」は述べている。

さらにシーインは、SPARC(フォーエバー21を共同所有するABGとサイモン・プロパティのコンソーシアム)の株の3分の1を取得し、SPARCもまたシーインの少数株を取得した。

一見すると「このパートナーシップは相互に有益であるかのよう」。だが「このパートナーシップは長くは続かないだろう」と、この分野に詳しいバブソン大学の経営実践の准教授ピーター・コーハンは同誌に述べている。

「シーインは3分の1の株を取得したが、フォーエバー21の事業の価値は、数年前ほど説得力のあるものではないかもしれない」

シーインになくてフォーエバー21にあるもののひとつは「店舗数」であるわけだが、シーインはその巨額な利益のほとんどを自社のプラットフォームから得ているブランドである。そして、今後も世界各国でECを強化していく様子であることから、このパートナーシップでアクセスできるようになったフォーエバー21の実店舗にさほどの価値を感じているとは思えない、との見解をコーハンは語っている。

彼はフォーエバー21の未来は、その「所有者であるABGやサイモン・プロパティの財務健全性にかかっている可能性がある」とみており、両社の株価を競合他社と比較すると低迷していることから「先はあまり長くないのでは」と語っている。