中国パンダ外交「融和的政権との友好演出で一貫」功罪は紙一重 東京女子大・家永真幸教授

AI要約

上野動物園で双子のジャイアントパンダが誕生日を迎え、中国のパンダ外交の歴史が話題になっている。

パンダは日中友好の象徴として初来日し、日中関係の影響を受けてきた。

近年、日中関係の悪化によりパンダがネガティブな存在として扱われるようになったが、上野動物園でパンダの飼育が続いている。

中国パンダ外交「融和的政権との友好演出で一貫」功罪は紙一重 東京女子大・家永真幸教授

上野動物園(東京都台東区)で先月、双子のジャイアントパンダ「シャオシャオ」(雄)と「レイレイ」(雌)が3歳の誕生日を迎え、近況が話題となった。初来日から半世紀が過ぎたか、パンダは愛らしい姿で多くのファンを癒やしてきた。一方で、そのパンダを中国は長く外交資源として活用してきた歴史がある。中国が「パンダ外交」に込める狙いとは何か。「中国パンダ外交史」の著者である東京女子大の家永真幸教授に話を聞いた。

■日中友好の象徴

パンダの初来日は半世紀前にさかのぼる。昭和47(1972)年、日中国交正常化が実現した記念として「カンカン」(雄)と「ランラン」(雌)が中国から上野動物園に送られ、国内は空前のパンダブームに沸いた。

家永氏は「当時は関係が途絶えていた中国大陸と関係が復活するということで中国ブームが起きていた。日本社会は最初のパンダを『日中友好のシンボル』という形で受け入れていた」と話す。

その後も日中関係は良好な時期が続き、中国に対する政府開発援助(ODA)も始まった。ランランとカンカンの死後も「ホアンホアン」(雌)、「フェイフェイ」(雄)が中国から送られ、良好な日中関係とパンダの来日がリンクしている。

■パンダがネガティブな存在に

家永氏は「2000年代前半に大きく状況が変わった」と指摘する。

平成13(2001)年に就任した小泉純一郎首相の靖国神社参拝や中国国内の反日デモで両国関係は急速に悪化する。18(2006)年に安倍晋三首相(当時)が「戦略的互恵関係」を打ち出して日中関係の改善に乗り出し、次の福田康夫政権時の20(2008)年、来日した中国の胡錦濤国家主席(当時)がパンダの貸与を表明するが、国内世論の受け止めは複雑だった。日本でも対中感情が悪化していたからだ。

家永氏は「そのころから、パンダを日中関係に結びつけてネガティブに論じるようになっていく。パンダで友好を演出するのであれば、非友好も演出できるという人たちが現れた」と語る。

その後も中国漁船衝突事件や尖閣諸島(沖縄県石垣市)の国有化など日中間は険悪な時期が続くが、23(2011)年には「リーリー」(雄)と「シンシン」(雌)が来日し、今も上野動物園で飼育されている。