「音楽生成AI」を大手レーベル3社が著作権侵害で提訴…一方で新聞出版業界同様「AIとの共存」を模索する流れも

AI要約

音楽生成AIに対する著作権侵害の訴訟が始まった。

AIはユーザーのプロンプトに従ってポップ系の楽曲を生成し、評価は割れる。

訴訟では機械学習用の音楽データが著作権侵害の元として指摘されている。

「音楽生成AI」を大手レーベル3社が著作権侵害で提訴…一方で新聞出版業界同様「AIとの共存」を模索する流れも

 昨年から度々訴えられている画像やテキストを生成するAI(MidjourneyやChatGPTなど)に続いて、ついに音楽を生成するAIにも訴訟の手が及んできた。

 先月25日、世界的な音楽レコード会社のソニー、ユニバーサル、そしてワーナーの3社が、音楽生成AIを開発・提供する米国の「Suno」と「Udio」を著作権侵害を理由に提訴した。

 いずれのAIも、ユーザーが言葉による指示、いわゆるプロンプト(たとえば「ジョギング中に聞きたくなるような軽快な曲を聴かせて」など)を入力するだけで主にポップ系の楽曲(歌)を自動生成して聴かせてくれる。

 それらに対する評価は人によって割れるかもしれないが、概ね「独創性や特徴の感じられない平凡な曲だが、聴くに堪えないほどひどいというわけでもない」という評価が主のようだ。

 このように生成AIの音楽自体に対する評価は決して高くないものの、他方で「実際に自分で使ってみると予想外に面白い」という(ある意味で高い)評価が聞かれるのも事実である。

 両社とも現時点のユーザー数を公表していないが、最近の生成AIに対する社会的な関心の強さから、興味本位を中心に相当数の利用者が存在すると見られている。その主な収益源は(無料と有料あるうちの)有料サブスクリプションで、今のところ利益は出していないが、今後ユーザー・ベースの拡大に伴い、いずれはそれを見込んでいる。

 こうした音楽生成AIはデジタル化された過去の音楽作品(データ)を大量に読み込み、いわゆる「機械学習」と呼ばれる訓練プロセスを経て様々な音楽のパターンを獲得する。あとはユーザーのプロンプトに応じて、それらのパターンを適度に組み合わせることによって新たな音楽作品を生成する。

 これら機械学習用の音楽データには、ウェブ上から広範囲に収集可能な公共データに加え、主要な音楽レコード会社が提供する音楽作品(著作物)も多数含まれると見られている。実際、原告側の3社は訴状の中で「生成AIビジネスの基盤は、著作権を有する音楽レコードを(著作権者の)許可を得ることなく利用することだ」と断定している。

 またSunoなど音楽生成AIに入力するプロンプトを巧妙に操作することで、(1950~80年代に活躍した)チャック・ベリーやABBAなど著名アーティストの楽曲と一致または酷似する楽曲を生成することができた、とも主張している。

 これらの会社は今後の裁判で音楽生成AIによる著作権侵害を認定することと同時に、その損害賠償として1曲当たり最大15万ドル(約2400万円)を求めている。

 これに対し被告側のUdioは「ちょうど(音楽を専門にする)学生が音楽を聴いたり楽譜を読んで学ぶのと同様、我々のモデル(生成AI)も大量の音楽レコードから学んでいるに過ぎない(ので、著作権は侵害していない)」と反論する。

 同じくSunoも「我々のテクノロジーは単に過去の音楽作品をコピーして吐き出しているのではなく、むしろ(それらを消化吸収して)全く新しい作品を生み出している(ので合法だ)」と反論している。