このままではイタリア文化から「リゾット」が消える─深刻化するコメ危機

AI要約

イタリアの米生産が危機に瀕している理由は、干ばつによる生産量の減少にあり、価格の上昇が続いている。

ポー渓谷の農家は水不足に苦しんでおり、地元の歴史と水利用の関係についても言及されている。

個々の農家が収穫が半分以下になるなどの影響を受けており、問題が深刻化している。

このままではイタリア文化から「リゾット」が消える─深刻化するコメ危機

日本人も好きなイタリアの米料理リゾット。しかし、その料理に使われるカルナローリ米やアルボリオ米の生産が、イタリアで危機に瀕している。干ばつによって生産量が大幅に減少したことで、2022年10月の卸売価格は前年比で倍以上となった。2023年後半から再び価格は下降したものの、価格は不安定で、農家は危機的な状況にある。

イタリアで何が起きているのか、英紙「ガーディアン」が追った。

イタリア北部を流れるポー川流域の町・モルターラに住む稲作農家のルイジ・フェラリス(58)は、2022年の冬から春にはまだ希望を持っていた。 同年の上半期の降水量は平均よりも40%少なく、同川の源流があるアルプス山脈に積もった雪の量はわずかだった。そのために、ポー川に流れ込む雪解け水の量は88%減少し、水量は激減していた。

そのうち正常に戻ると彼は信じていた。「水不足は一時的なものだと思っていました」

イタリア北部の大部分に広がるポー渓谷の一部を成すこの低地では、歴史的に水が不足することはなかった。もともと沼地であり、氾濫原でマラリアの温床となっていたほどだった。地元の農民たちは、水を押し戻すために何世紀も戦い、排水路を建設し、土地をなだらかにすることで、少しずつ湿地帯を作物畑や水田に変えていった。

「この地域の問題は、いつも水を外に出すことでした。その逆はまったくありませんでした」と、イタリア農業総同盟の地方支部であるコンファグリコルトゥーラ・パヴィアのアルベルト・ラザーニャ理事は説明する。

フェラリスは、2022年5月末、自分の水田の作物がいつものように青々としていないことに気づいた。「田んぼはすべて茶色くなっていました。乾いた藁のようでした」

彼は祖父から受け継いだ水田を37年間経営してきた。しかし、このようなことは以前にはまったくなかった。その年、コメの収穫量は半分以下になった。しかも、そのような経験をしたのは彼だけではなかった。