「大雨降るというのに堤防板がない」…浸水の悪夢に震えるソウル市民

AI要約

集中豪雨による浸水被害が続くソウル瑞草区のAマンション団地では、地下駐車場の入口が水浸しになるなど被害が拡大している。

堤防板の設置が不十分で、多くの団地が浸水被害に備えておらず、住民からも不安の声が挙がっている。

住居価格の低下や管理責任などの理由により堤防板設置が進まず、政府や大学などが積極的な支援を必要としている。

ソウル瑞草区(ソチョグ)のAマンション団地は2022年いわゆる「集中豪雨」時に大きな浸水被害を受けた。人命被害はなかったが地下駐車場の入口が完全に水に浸り、屋根だけが辛うじて水の上に出た車が少なくなかった。しかし30日に訪れたこのマンションは依然と団地外部から流れてくる水を遮断する治水板(堤防板)を設置していなかった。地下駐車場に入る入口に土嚢10袋ほどが寂しく積まれていた。

該当マンションに住んでいる大学生のキムさん(24)は「地下駐車場に堤防板がないことを今さらながら知った」とし「梅雨期になれば地下駐車場の浸水で人命被害が発生したというニュースを聞くが、土嚢だけで被害を防げるのか心配」と話した。マンションを管理する企業側の関係者は「マンションの構造のため、地下駐車場だけに堤防板を設置することはできない」とし「万一の場合に備えて揚水機ポンプを準備しておいた」と話した。

済州城山(チェジュ・ソンサン)に1時間当たり81ミリの集中豪雨が降るなど本格的な梅雨が始まり、市民の浸水に対する不安が大きくなっている。ソウル研究院がソウル市内で浸水被害の懸念が大きいと見ている場所は江南(カンナム)・瑞草・江西区(カンソグ)などだ。2010年以降、2回以上の浸水被害が出たか、1時間当たり100ミリ以上の雨が降る場合、浸水が予想される場所だが、サムスン火災交通安全文化研究所がこの地域にある500世帯以上の大団地マンション13カ所を調べてみたところ堤防板が設置されていたのはたった3カ所だけだった。堤防板が設置されなかった10団地のうち2カ所は2022年にすでに浸水被害を受けた場所だった。

実際に2年前に浸水被害を経験したソウル松坡区(ソンパグ)のある大団地マンションを訪ねて行ってみると、堤防板が設置されていない様子だった。このマンションの警備員は「昨日(6月29日)のように雨が降れば地下駐車場出入口側に水が入ってくるという苦情が多く入ってくる」とし「堤防板が設置されていなければならないのでは」と話した。2年前に雨の被害を受けた江南のあるマンション警備員Aさん(69)は「このマンションは地下駐車場がなく、駐車場堤防板を設置することはできない」とし「今年も雨がたくさん降るということでとても心配」と話した。

2022年の集中豪雨当時、一家3人が亡くなった半地下住宅の堤防板の設置も依然と進んでいない状況だ。ソウル市は先月28日基準で半地下住宅2万4842世帯のうち堤防板が設置された世帯が61.3%(1万5217世帯)だと説明した。残りの38.7%(9625世帯)は住民の設置反対、居住者不在などの理由で堤防板が設置されなかった。

堤防板の設置が低調な原因としては、「烙印効果」による住居価格下落懸念などが挙げられる。ソウル研究院は先月27日に発刊した報告書で「一部共同住宅で堤防板設置時に浸水懸念地域という烙印を押されて住居価格が下落するのではないか懸念して堤防板の設置に否定的」と説明した。報告書を書いたキム・ソンウン副研究委員は「ソウル市が支援金を出して施設設置を誘導しても、管理・責任問題も障害物になる場合がある。家主など管理主体が負担を感じる場合が少なくない」と説明した。

漢陽大(ハニャンデ)都市工学科のイ・チャンム教授は「住宅は私有財産である以上、堤防板の設置も自律的な努力や試みが優先されるべき」としつつも「気候異変により集中豪雨が続いて繰り返し浸水が発生する地域の場合には、より積極的なインセンティブを与えたり義務化を行ったりする方案も悩んでみる必要がある」と話した。