「空き家が増える=マンション価格が下がる」わけではない…大学教授が「空き家問題は虚像」と断言する理由

AI要約
空き家率の実態は調査によって異なり、空き家数のカウント方法には問題がある住宅・土地統計調査は空き家を正確に把握するための調査ではない空き家数の過大見積もりや居住有り住宅数の過小見積もりが起きている可能性が高い

空き家が増えると中古マンション価格も下がるのか。都市計画が専門の麗澤大学工学部教授の宗健さんは「そもそも空き家率は調査によって結果が大きく異なるため注意が必要だ。また、空き家率が上昇したとしてもマンション価格への影響は限定的である。不動産価格は社会情勢から受ける影響が大きいからだ」という――。

■「空き家率が過去最高」と言うけれど…

 4月に発表された「令和5年住宅・土地統計調査」(総務省統計局)では、「空き家数は900万戸と過去最多、空き家率も13.8%と過去最高」とされており、空き家は大きな社会問題だとされている。しかし、住宅・土地統計調査の空き家は実態より多くカウントされている可能性が高く、実際は問題ではないレベルだ。詳しく説明しよう。

 空家問題をあおる主張のほとんどは、住宅・土地統計調査の空き家数・空き家率を元にしているようだが、住宅土地統計調査(以下「住調」という)は、さまざまな調査項目の一部に空き家に関するものが含まれているだけで、そもそも空き家の把握を主目的とした調査ではない。

 また、国勢調査のような全数調査ではなく、「1調査単位区当たり17住戸、計約340万住戸・世帯」を対象とした抽出調査となっている。

 しかも、郵送や調査員への手渡しのほか、インターネットでの回答も可能とはいえ、調査対象の全員が回答しているわけではない。

■「住宅・土地統計調査」の空き家調査は目視に頼っている

 そして、回答が得られなかった場合については、令和5年の調査方法には「調査員等が建物の外観を確認したり、世帯や建物の管理者に確認するなどして作成した」と、平成25年の調査方法には「空き家などの居住世帯のない住宅については,調査員が外観等から判断することにより,調査項目の一部について調査した」と記載されている。

 つまり、調査対象が空き家だった場合には、そもそも調査の回答が得られないが、実は居住者がいるのに(空き家でないのに)回答がない場合でも、調査員が空き家だと判断すれば、その家は空き家にカウントされることになる。

 そして、国土交通省の2009年の「空家実態調査」に、「外観上明らかに空家と判断できる住宅が少なかった。二次的住宅などは外観から判断できなかった。集合住宅はオートロックが多く中に入れなかった」とあるように、外観で空家かどうかを判断することは相当難しい。

 住調は抽出調査であるため、もともと誤差を含んでいるが、空家かどうかを調査員の目視判断に頼っているため空家数が過大に見積もられている可能性が高い。逆に居住有り住宅数は過小に見積もられている可能性が高い。