トランプ氏はインフレ対策批判で「攻勢」 米大統領選討論会

AI要約

トランプ前大統領がバイデン大統領を批判し、インフレ問題が討論の焦点となった。

バイデン大統領とトランプ前大統領のやり取りや、インフレ率の推移について言及。

専門家からの懸念や警告もある中、今後の経済政策の展望が不透明な状況。

トランプ氏はインフレ対策批判で「攻勢」 米大統領選討論会

 11月の米大統領選に向けた第1回テレビ討論会で、共和党のトランプ前大統領(78)は、米国の物価上昇(インフレ)について民主党のバイデン大統領(81)の責任だと厳しく追及した。米経済が成長を続けているとはいえ、物価高が収まっていないのは事実でバイデン氏は防戦を余儀なくされた。

 「彼(バイデン氏)の仕事はお粗末だった。インフレが私たちの国を滅ぼそうとしている」。トランプ氏は米経済の最大の課題であるインフレについてバイデン氏を痛烈に批判。自らが政権を引き継いだ時点では物価高は起きていなかったとして、財政拡張的なバイデン氏の経済政策がインフレの元凶だと主張した。

 これに対し、バイデン氏は「私が大統領を引き継いだ時、経済は壊滅的だった。それがインフレが起きていなかった理由だ」と反論。トランプ政権時に始まった新型コロナウイルス禍で打撃を受けた経済を立て直し、雇用を大幅に増やしたなどと成果を強調した。

 米国のインフレ率が4%超に上昇したのはバイデン政権が発足した3カ月後の2021年4月。その後のウクライナ危機に伴う原油高など外部要因があったとはいえ、トランプ氏が言うようにバイデン政権が発足してから物価上昇が始まったのは事実だ。

 インフレ率は23年6月以降、3%台で推移。22年6月のピーク(9・1%)から大幅に下がっているものの、まだコロナ禍前に比べれば高い水準で、各種世論調査では有権者のインフレへの不満は根強い。「食料品の値段は2倍、3倍、4倍になっている。もう生きていけない」などと話を誇張して批判するトランプ氏に対し、バイデン氏は説得力を持って反論できず「労働者階級の人はまだ困難な状態にある」などとインフレ長期化を認めざるを得なかった。

 ただ、トランプ氏は「全ての国の輸入品に10%の関税を課す」などと、バイデン政権以上にインフレを加速させる恐れのある経済政策を幾つも掲げている。ジョセフ・スティグリッツ氏らノーベル経済学賞を受賞した16人の学者が、トランプ氏勝利の場合にインフレが再燃するリスクを警告するなど、専門家からは懸念の声が上がっている。

 この点について質問を受けたトランプ氏は「中国のような国に多くの金を支払わせるだけだ」などとはぐらかし、正面からの回答を避け続けた。【ワシントン大久保渉】