脱炭素、難民流入、インフラ崩壊…世界の「見切り品ショップ」に成り果てたドイツが歩み続ける「発展途上国への道」

AI要約

ドイツは世界の投資家にとって見切り品ショップとなりつつあり、エネルギー政策や産業の未来に関する懸念が高まっている。

エネルギー転換や気候変動への対応についての議論が活発化し、国民の意識も変わりつつあるが、メディアの報道に疑問が呈されている。

過去の自然災害や現代の異常気象についての正確な理解や対策が求められる中、ドイツの報道姿勢や情報の取り扱いについての葛藤が浮き彫りになっている。

脱炭素、難民流入、インフラ崩壊…世界の「見切り品ショップ」に成り果てたドイツが歩み続ける「発展途上国への道」

 ドイツ取引所(フランクフルト証券取引所を運営している株式会社)のテオドル・ヴァイマーCEOによれば、「ドイツは世界の投資家にとって、見切り品ショップになってしまった」。4月末、バイエルン州の経済諮問委員会に招かれて講演した時の発言だ。

 委員会の据えたテーマは、「ドイツ政府の進めているエネルギー転換と、ドイツが陥っている脱産業化、さらにドイツの未来は、どのように繋がっているのか?」。

 この日は、経済学者のハンス=ヴェルナー・ジン氏も演壇に立った。氏は、ミュンヘンのifo経済研究所の前所長で、2016年に退任した後も、経済理論家の最高峰の一人として活躍中。難しい話をわかりやすい言葉で説明してくれるので、素人にとっては非常に有難い存在だ。

 最近、ヴァイマー氏やジン氏のみならず、産業界の重鎮が、政府のエネルギー政策について、次々に歯に衣を着せぬ批判を展開し始めた。前々回のこのコラムでは、ドイツ最大の電力会社E.ON社のCEOが、緑の党のハーベック経済・気候保護相を辛辣に批判した話を書いた。

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参照)ドイツ「エネルギー転換」の深すぎる闇…脱原発・再エネ拡大に伴う膨大なコストは全て国民の電気代に上乗せされ(現代ビジネス 2024.05.31)

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 正確に言うなら、これらの人々はずっと以前から、あらゆる機会を見つけてはエネルギー政策の修正を求めていたのだが、大勢の御用学者が極端な“気候危機”と脱炭素の必要性ばかりを強調し、さらに、それを御用メディアが、ホラー映画のような地球滅亡のシナリオ付きで拡散したため、国民は完全にミスリードされ、ドイツは電気供給の安定を蔑ろにし、再エネの増設に向かって邁進し続けてきた。

 先月、南ドイツで起こった大洪水についても、第1テレビははっきりと、「洪水の原因は人間が原因となっている温暖化による異常気象だ」と断言。洪水の原因は大雨だから、異常気象ではあることは確かだが、しかし、それは今始まったことではない。

 大作曲家バッハや、宗教改革のルターの生きていた頃にも大雨は降り、洪水はあった。だから、その自然の脅威をさまざまな治水工事で予防するのが文明の粋である。

 それなのに、現在の異常気象の原因を、人間の過去100年の行動にのみ押し付け、その他の全ての論を無視し続けるドイツの主要メディアの態度には大いなる疑問を感じる。

 ただ、彼らは、たとえば、バイデン氏の健康が大統領を続投するにはかなり怪しいという報道も、コロナのワクチンには安全性に問題があるとする学術論文も、全てフェイクニュースや陰謀論扱いする傾向があるので、報道についての信条が違うのかもしれない。

 そんなわけで、今ではドイツの洪水は “気候温暖化のせい”として定着してしまったが、これと、冒頭に記した“ドイツが見切り品ショップになってしまった”ことと無縁ではないと、私は思っている。