【解説】ロシア不在の「ウクライナ平和サミット」に意味はあるのか?

AI要約

スイスで開催されたウクライナの和平サミットが共同声明を採択して閉幕し、90ヵ国以上が参加したもののロシアは招待されず、一部の新興国や途上国が共同声明に署名を拒否した。

共同声明では、ザポリージャ原発の安全確保、食料安全保障の武器化防止、戦争捕虜や連行された市民の解放などを明記し、ロシアに求めた。

しかし、ロシア不在で開催されたサミットの中で、ウクライナとロシアの和平交渉の具体的な形について合意がなく、様々な国の代表が当事者同士の交渉と妥協を求める声が上がった。

【解説】ロシア不在の「ウクライナ平和サミット」に意味はあるのか?

ウクライナの和平案について協議するためにスイスで開かれた「平和サミット」は6月16日、共同声明を採択して閉幕した。

2日間の日程で開催されたサミットには90ヵ国以上が参加したが、当事国であるロシアは招待されず、一部の新興国や途上国が共同声明に署名しないなど、和平への道のりは厳しいことをあらためて浮き彫りにした。

80ヵ国以上が署名した共同声明では、「ザポリージャ原発の安全確保」「食料安全保障を武器化しないこと」「戦争捕虜や連行された市民の解放」の3点を明記して、ロシアに求めた。

ウクライナのゼレンスキー大統領はサミットを終えて、「和平への第一歩だ」と成果を強調したが、すべての参加国が賛同したわけではないことも認めた。「残念ながら、まだバランスを取ろうとしている人たちがいます」と彼は言い、ロシアが世界を分断しようとしていると付け加えた。

その署名を拒んだ面々とは、ロシアとの関係も重視するサウジアラビア、インド、南アフリカ、インドネシア、メキシコ、アラブ首長国連邦など、いわゆる「グローバルサウス」と呼ばれる国々だ。

なお、中国とブラジルはサミットに招待されたものの、前者は参加を辞退し、後者はオブザーバー参加にとどめた。いずれもその理由をロシアが招待されていないからだとしている。

他方、主要な新興国のなかで唯一署名したのがトルコだ。英紙「ガーディアン」は、この動きを「ウクライナにとって後押しとなるものだ」と伝えている。というのも、トルコはロシアと緊密な貿易関係を維持し、和平の仲介役になることに意欲を示している国だからだ。

共同声明には、「すべての関係国の代表による、さらなる関与が求められる」とも記された。

これについて米紙「ニューヨーク・タイムズ」は、「その曖昧な表現こそが、このサミットを覆っていた最大の問題について共通認識がなかったことを物語っている」と指摘している。

その最大の問題とは、「ウクライナとロシアはいつどのような形で和平交渉をおこなうべきなのか?」であり、その答えがないまま、しかも当事者のロシア不在で平和サミットが開催されたわけだ。

戦争が3年目に突入し、どちらにも軍事的勝利への明確な道筋が見えないなか、サミットでは各国の代表から当事者同士の交渉と妥協を求める声も上がった。インド、サウジアラビア、南アフリカ、トルコなどがその重要性を繰り返したという。

インドの代表は署名を見送った理由について「当事者同士が受け入れることのできる選択肢だけが、持続的な平和につながるからだ」と述べた。

南アフリカの代表も、「我々の行動はロシアとウクライナが交渉のテーブルに着く可能性を排除すべきではない」との声明を出した。

ロシア抜きの和平協議にどれだけの意味があるのか、大きな疑問は残ったまま、「平和サミット」と称された会合は幕を閉じた。