スマホ禁止は無効果─英社会心理学者が教える子供を「スマホ依存にしないために本当に必要な2つのこと」

AI要約

子供たちのスマホ依存とメンタルヘルスの悪化への懸念が世界的に高まっている。

一部の専門家は厳しい制限を提唱する一方で、ソニア・リビングストン教授はスマホ使用時間の制限に反対しており、使用状況が重要であると主張している。

議論は両極端に分かれているが、リビングストンはテクノロジーと子供のメンタルヘルスの関係を考慮し、妥協を提案している。

スマホ禁止は無効果─英社会心理学者が教える子供を「スマホ依存にしないために本当に必要な2つのこと」

子供たちのスマホ依存と、ソーシャルメディアの影響によるメンタルヘルスの悪化が世界中で問題視されている。子供たちを守るための方法についてさまざまな議論がなされており、厳しい使用制限を訴えるジョナサン・ハイトの主張についても、「クーリエ・ジャポン」では伝えてきた。

しかし、それとは異なる主張をする専門家もいる。英国政府にアドバイスを重ねてきたソニア・リビングストン教授に、子供たちをデジタル環境のなかでどう守ればいいのか、英紙「フィナンシャル・タイムズ」が聞いた。

子供のスマートフォン利用に関する議論は、両極端にわかれがちだ。

一方は、テクノロジーによって壊れやすくなった世代に着目する。彼らが重視するのは、ソーシャルメディアがメンタルヘルスの悪化の原因になっているという研究だ。彼らの主張する解決策は、米国の社会心理学者ジョナサン・ハイトによって示されている。16歳未満の子供によるソーシャルメディアの使用禁止、学校でのスマホ禁止に加え、身体的な遊びを奨励している。

それと対立するもう一方のグループは、前者の主張を、感情的な誤った「モラル・パニック」だと考える。それはかつてビデオゲームに向けられた批判のようなものだと。ハイトを批判する者たちは、スマホと子供のメンタルヘルスとの関連は明確ではないと訴える。仮にティーンエイジャーのスマホ利用が有害であっても、ソーシャルメディアは不可欠になっているために根本的には抑制できないと考える。

しかし、これらの両極端な意見を少し和らげ、妥協できる可能性はある。ハイトと同じく社会心理学者のソニア・リビングストンの主張を見てみよう。彼女は、英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で、子供たちのデジタル環境における安全性に関する研究を率いている。彼女の研究は、テック企業に対してユーザーのケアを義務付けた、2023年成立の英国「オンライン安全法」に影響を与えた。

リビングストンは、子供たちのスマホ使用時間の制限に反対している。重要なのは、子供たちがスクリーン上で何をするか、どのような状況で、どのくらい長く使用するかだからだ。スマホやタブレットの使用にはリスクはあるが、メリットもある。

子供のメンタルヘルスは複雑である。「テクノロジーによってZ世代がダメージを受けていると決めつけるハイトの主張は大げさです。しかし、スマホの使用がメンタルヘルスに何の影響も与えないと言う人もいないでしょう。私がインタビューした若者の多くは、スマホのせいで生活が悪化していると話しました」