韓国「教頭を殴った小学生を悪魔化するのではなく社会的代案の提示を」【記者手帳】

AI要約

事件の背景や報道のあり方、保護者の責任について考察。

教育現場での教権侵害や児童の情緒的危機に焦点を当てた問題。

保護者の拒否による治療受けられない児童の問題と緊急支援の必要性。

韓国「教頭を殴った小学生を悪魔化するのではなく社会的代案の提示を」【記者手帳】

 今月初め、ある小学生が教頭を殴った映像が公開され、非難世論が沸き起こった。教育現場の「教権侵害」に対する大衆の怒りは収まらず、後続報道も相次いだ。先日は、この生徒が自転車窃盗事件まで起こしていたとも報道された。学校に「情緒的治療」が必要だと判断された小学3年生の児童に、この2週間で起きた出来事だ。

 教育界では、教権侵害の現実を告発するのが目的だったとしても、報道とそのあり方においては慎重であるべきだと指摘されている。教員団体「良い教師運動」のハン・ソンジュン共同代表は16日、ハンギョレに「このニュースは教権侵害の現実をあらわにしたものの、刺激や興味中心の報道へと流れたことで、本質は看過されてしまったと思う。大切なのは情緒的危機に直面する児童のために社会が何をすべきなのかだが、結果的にこの児童だけが非難の中心に立たされることになった」と指摘した。映像を報道機関に提供した全羅北道教員労組のチョン・ジェソク委員長も、今月10日に自身のフェイスブックで「意図したものではなかったが、社会的責任を感じる」とし、「情緒・行動危機の児童に必要なのは(その児童の)悪魔化ではなく治療」だと述べている。

 今回の事件は保護者の放置から始まったという見方が強い。教育当局はこの児童のように情緒・行動危機に直面している児童にカウンセリングや治療を提供する「ウィーセンター(Wee center)」を運営している。しかし、学校や教育庁がカウンセリングや治療を勧告したとしても、保護者が拒否すれば、それを強制することはできない。昨年、野党「共に民主党」のカン・ドゥック議員が公開した資料によると、「情緒・行動危機関心群」と診断されたにもかかわらず治療を受けていない児童生徒の割合は、この5年間の年平均で27.3%(4万3千人)にのぼる。このうち80%は保護者の拒否がその理由だった。問題の児童もやはり、保護者が拒否したためカウンセリングや治療が受けられず、教員を暴行するに至ったのだ。

 児童生徒に対する緊急支援を保護者が拒否した場合はどうするかについては、代案が急務だ。国会立法調査処のイ・ドンナン研究官は、「学校が事前に措置を取ってから保護者に通知するなどのやり方を認める法的な根拠が必要だ」とし、「教権保護だけでなく、子どもの人権のためにも、保護者の持つ権利については改編を考えるべき時期に来ている」と指摘した。もう児童に対する非難はやめ、この児童のために何ができるかを考えるべきだ。

パク・コウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )