米利下げ、さらに遠のく インフレ根強く 再選目指すバイデン氏にも痛手〔深層探訪〕

AI要約

FRBは政策金利を7回連続で据え置き、年内の利下げ回数を1回と見込む。

インフレ率の鈍化はあるものの、高水準が続くことで消費者心理は圧迫され、バイデン大統領にとっても頭痛の種となっている。

インフレ対策が再選に影響を与える可能性があり、FRBは引き締め的な政策を続ける必要を訴えている。

米利下げ、さらに遠のく インフレ根強く 再選目指すバイデン氏にも痛手〔深層探訪〕

 米連邦準備制度理事会(FRB)は12日までの連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を7会合連続で据え置くことを決めた。同時に公表した政策金利見通しでは、年内の利下げ回数を1回と想定。3月時点の3回から減らした。根強いインフレを背景にFRBの利下げ開始はさらに遠のいた。11月の大統領選で再選を目指すバイデン大統領にとっても、インフレは頭痛の種だ。

 ◇消費者心理を圧迫

 「このような数字をもっと望んでいる」。パウエルFRB議長は記者会見で、消費者物価指数(CPI)の伸びの鈍化を歓迎した。5月のCPI上昇率は前年同月比3.3%と2カ月連続で減速し、市場予想も下回った。

 一方でパウエル氏は、インフレ率が「依然として高過ぎる」と明言。最近のCPIなどの「小幅な進展」(FOMC声明)くらいでは、「金融緩和が妥当であるとの確信には至らない」(パウエル氏)と、警戒姿勢を崩さない。

 米国のインフレ率は数字だけ見れば、ピークから大幅に鈍化した。しかし、物価高は米国民の心理に重くのしかかり、バイデン氏の支持率低迷の一因になっているとされる。

 実際、調査会社ユーガブなどが今月行った世論調査では、最重要課題として「インフレ」を挙げた人が全体の25%で最も多かった。一方、大統領選の重要争点である「移民」は10%にとどまった。

 消費者がインフレ鈍化を実感しない理由について、アデエモ米財務副長官はテレビインタビューで「大半の米国民がCPIの伸び率ではなく、(日々の)ガソリンや食料品価格に関心を払う」ためだと分析する。「価格水準は引き続きコロナ禍前よりも高く、消費者心理に重くのしかかっている」(FRB高官)のが実情だ。

 バイデン氏は5月のCPIを受けた声明で、「多くの家庭が生活費の圧迫を感じているのは分かっている」と指摘。高収益を享受している大手スーパーに食料品の値下げを呼び掛けるなど、インフレへの取り組みをアピールした。

 バイデン氏は大統領選の世論調査で、共和党の候補指名を確定させたトランプ前大統領と一進一退の戦いを続ける。物価動向は再選のカギを握っていると言えそうだ。

 ◇痛みはあるが

 FRBの利下げ時期は一時、今年3月ごろと見込まれていたが、インフレ鈍化の停滞を受け、後ずれを余儀なくされている。政策金利は年5.25~5.50%と、既に2001年以来の高水準にある。長期に及ぶ金利高止まりは、消費者心理をさらに悪化させかねない。

 パウエル氏は「痛みはあるだろうが、究極的な痛みは長期の高インフレだ」と強調。引き締め的な政策を取り続ける必要性を訴えた。(ワシントン時事)