民主主義を救ったノルマンディー上陸作戦から80年、「Dデイ演説」で見せたバイデンの決意は本物か

AI要約

80年前のノルマンディー上陸作戦(Dデイ)について触れ、バイデン大統領が民主主義の重要性を説く演説について言及。

バイデン氏は民主主義の要諦である自己犠牲と国家のために尽力する精神を強調。

過去の英雄たちを称えつつ、現代の課題に対する団結を促すバイデン氏のスピーチが、今もなお有効であることを示唆。

 (国際ジャーナリスト・木村正人)

■ 「民主主義は私たち一人ひとりから始まる」

 [ロンドン発]「史上最大の作戦」と呼ばれるノルマンディー上陸作戦(Dデイ)から80年――。ジョー・バイデン米大統領は6月7日、仏・ポワンデュホックに立ち「今日、欧州でウラジーミル・プーチン露大統領の侵略に立ち向かう米国を望まない人がいるだろうか」と問いかけた。

 ノルマンディー上陸作戦で米陸軍レンジャーは高さ30メートルものポワンデュホックの断崖を30分でよじ登り、オマハビーチとユタビーチに上陸する米軍を狙うドイツ軍の砲台を攻め落とした。作戦に参加したレンジャー225人のうち作戦終了時に戦闘可能だったのは75人以下だ。

 バイデン氏は「民主主義、米国の民主主義を語る時、私たちはしばしば生命、自由、幸福の追求という理想を語る。私たちが語らないのはそれがいかに難しいかということだ。本能が立ち去ることを促しても、米国の民主主義は最も困難なことを私たちに要求する」と力を込めた。

 「民主主義は私たち一人ひとりから始まる。一人の人間が自分よりも重要なものがあることに気付いた時、民主主義は始まる。任務が自分の命よりも大切だと決断した時、自分の国を自分よりも大切にすると決断した時、レンジャーたちはヒトラーの侵略に立ち向かった」

■ バイデンとレーガンのDデイ演説

 バイデン氏はドナルド・トランプ前米大統領を意識して「レンジャーたちは1930~40年代に憎むべきイデオロギーを退けるために戦った。今日の憎むべきイデオロギーを退けるために彼らはあらゆる手段を尽くすだろう。彼らは米国が孤立主義に走ることを望んでいない」と言った。

 「この崖を登ったレンジャーたちは自分たちの行動が世界を変えるとは思ってもいなかったろう。しかし実際に世界を変えたのだ。普通の米国人は困難に直面すると並外れたことを成し遂げることがある。これほど良い例はないだろう」

 「彼らは私たちにこの崖を登れと求めているのではない。米国が象徴するものを忠実に守るように求めている。彼らは私たちに自由を、民主主義を守るために立ち上がり、自分より大きなものの一部となるよう求めている。米国の偉大さが過去のものになったと私は思わない」

 40年前のDデイにロナルド・レーガン米大統領(当時)が演説した「ポワンデュホックの若者たち」を彷彿させる演説だった。日本のNPO(非営利団体)と協力しウクライナに車いすを送り続ける筆者は「民主主義は私たち一人ひとりから始まる」という言葉に胸が熱くなった。