【緒方耕一】ノーノーをバックアップした岸田のリード、打撃でも投手を助けられればレギュラーも

AI要約

巨人が戸郷のノーヒットノーランで阪神に勝利

捕手の岸田がピッチャーをサポート

岸田の成長とレギュラー争いの影響

【緒方耕一】ノーノーをバックアップした岸田のリード、打撃でも投手を助けられればレギュラーも

<阪神0-1巨人>◇24日◇甲子園

 引き分けを挟んで4連敗中の巨人が、首位の阪神を相手にエース戸郷のノーヒットノーランで連敗を止めた。特別に調子が良かったように思えなかった戸郷だが、ファーストストライクを積極的に奪って阪神打線を抑え込んだ。「戸郷に尽きる」と言うべき試合だろうが、そのピッチングをバックアップしたのが、捕手の岸田だった。

 最高潮にしびれる場面は、9回裏1死二塁で、勝負強い近本を迎えた場面だろう。一塁ベースが空いている状況で、その後には中野、森下と続く並びだった。中野も好打者で、森下には逆転打を打つ長打力がある。しかし、近本は両方を持つ好打者。このような場面で、一番対戦したくない打者といっても過言ではないだろう。

 とはいえ近本との勝負を避ければ、逆転の走者になる。際どいところを攻め、その流れで勝負をするか避けるかを決めると思っていた。そして初球はフォーク。どういう反応をするか様子を見る意味合いが強かったのだろうが、打ち気満々の近本は空振りした。

 このケースで岸田は2球目は内角の真っすぐを要求した。ストライク先行での内角攻めは厳しく攻めやすく、内角を使うならここしかなかったと思う。しかし気をつけなければいけないのは、投手心理。勝負を急げば甘くなるし、力みすぎれば失投もある。そんな時に岸田は両手を大きく広げ「広く攻めていけ」とジェスチャーを送っていた。

 結果は逆球に大きく外れ、ボールになった。もう1球、ボールを挟んで2-1からはフォークが高めに浮いたが、一塁ライナー。運にも助けられたが、状況判断もケアしなければいけない状況も、しっかりと理解していた。

 7回2死から大山を迎え、1-2から2球真っすぐを続けて力勝負で打ち取った。8回1死からも前川、代打の渡辺も最後は真っすぐ勝負で打ち取った。1発のある打者に真っすぐで抑えられたのも、打者を観察できていたからだろう。

 巨人はここまで、開幕直後は大城卓を起用し、続いて小林を起用してきた。岸田は少ないチャンスの中で、打撃で結果を出し、守備でも成長している姿を見せて現在の立場に上がっている。

 今試合はリードで頭がいっぱいだっただろうが、打撃でチームの足を引っ張った。チャンスで2つの併殺打は、いずれも低めの変化球を強引に打って「注文通りのゲッツー」だった。大城卓、小林という、いいキャッチャーを押しのけてレギャラーを取るためには、打撃でも、もうひと踏ん張りしなければいけない。レベルの高いレギュラー争いはチーム力を上げるし、打てて守れるキャッチャーが育てば、チームも優勝に近づけると思う。(日刊スポーツ評論家)