分裂騒動にファンの減少…「スターダムを守れていない」中野たむは“どん底”からどう這い上がったのか?「怖くて、怖くて、何をしても涙が…」

AI要約

中野たむが大きな苦難を経験し、復帰を果たすまでの道のりを振り返る。

怪我や精神的な苦しみを乗り越え、ついにベルトを取り戻すことに成功する。

スターダムの現状や苦境に直面しながらも、中野たむは持ち前の強さを示し続ける。

分裂騒動にファンの減少…「スターダムを守れていない」中野たむは“どん底”からどう這い上がったのか?「怖くて、怖くて、何をしても涙が…」

「なんとか立ち直りましたけど……」

 中野たむは1年前の悪夢のようなアクシデントを回想していた。2023年10月9日、愛知県体育館で行われていた刀羅ナツコとの赤いベルト(ワールド・オブ・スターダム王座)3度目の防衛戦は、「たむロード」を着実に進めるために勝利が不可欠なものだった。だが持ち上げた刀羅を支えきれずに、「最後の最後でヒザの上に落ちてしまった」。

 何とか防衛は果たしたものの重傷を負ってしまった。中野は気づかなかったというが、試合中に腰もかなり痛めていた。筋挫傷だった。そのせいかフィニッシュのスクリュードライバーが崩れて自らのヒザまで大きく破壊してしまったのだ。最初は持ち上げられなかったのに、執念でもう一度待ち上げたものだったが、代償はあまりにも大きかった。

 結果的に4カ月の欠場を強いられて王座を返上した。カムバックには時間がかかった。

 新王者には決定戦で舞華がついたが、中野は「舞華を『暫定王者』にしてしまって申し訳ない」と思っていた。中野が欠場している間、舞華は王者として揺れ動いたスターダムを支えていた。

 中野は今年2月4日に大阪で復帰したが、スターダムはその後も激震続きだった。当日にはロッシー小川の電撃解雇があった。

「プロレスに対する恐怖心が大きくなってしまって。ケガするのが怖い。なんかそういう恐怖がずっと付きまとっていた。それ以上に悲しいことがいっぱいあった。スターダムは分裂と言われて、ライバルたちがいなくなり、ファンが少しずつ減っているのがわかった。復帰するまでも苦しかったけれど、復帰してからがより苦しかった。自分がスターダムを守れていない……」

 それが悔しくて歯がゆかった。

 7月に札幌で舞華を破り新王者になった「H.A.T.E.」の刀羅に、中野はイスで襲撃されて、髪の毛も切られた。8月31日、武蔵野の森総合スポーツプラザで中野は不安を抱えたまま刀羅に挑んだ。勢いはどう見ても刀羅にあった。中野の試合は前にも増して悲壮感が前面に出ていた。それは怖いくらいのものだった。

「ヒザは痛い。でもここで止めたら、去年とまったく同じになっちゃう。怖さとその怖さに負けたくないという気持ちとのせめぎあいで、正直メンタルめっちゃきつかったです。タイトルマッチの前日はずっと泣いていました。怖くて、怖くて、何をしていても涙が出てくる。でも最後までやり切れて、ベルトも取り戻せたので、逃げなくてよかった」