大谷翔平、進化した盗塁 専門家ただひとつの『不安』を指摘「対策してくれたら」下半身の故障と無縁の理由も明かす【動作解析】

AI要約

大谷は前人未到のシーズン「50本塁打、50盗塁」を達成し、盗塁数を激増させた。下半身の筋力と柔軟性が特に注目され、将来的な「イチロー超え」の可能性も指摘されている。

川村准教授が大谷の盗塁の映像を分析し、上半身の前傾から加速する姿勢や下半身の筋肉の活用について解説。また、スプリングトレーニングの効果や盗塁数の増加に注目が集まっている。

大谷の二刀流によるキャリアハイの盗塁数と今後の目標について、川村准教授が期待を寄せる。イチローの記録に近づく可能性も指摘されている。

大谷翔平、進化した盗塁 専門家ただひとつの『不安』を指摘「対策してくれたら」下半身の故障と無縁の理由も明かす【動作解析】

 前人未到のシーズン「50本塁打、50盗塁」を達成したドジャースの大谷は今季、盗塁数を激増させた。プロ野球や米大リーグの選手の動作解析を手掛け、昨年まで4年間、大学日本代表のコーチを務めた筑波大の川村卓准教授(54)が今季と昨季までの盗塁の映像を比較。二刀流ならではの下半身の筋力の強さと柔軟性をポイントに挙げ、将来的な「イチロー超え」の可能性にも触れた。

 大谷のスタートからスライディングの直前まで、川村准教授は上半身に今年の進化を見て取った。前傾をキープし、加速していく。陸上短距離の選手がクラウチングから駆け出すのと考え方は同じだ。

 「重心を体の中心から外すと、グッと後ろに蹴る推進力が生まれやすくなる。ただ、スピードを出すため、足を出すのが大変な作業。(姿勢は)昨年より今年のほうが低くなっている」

 姿勢を保ちながら、力をロスしないために重要になるのが臀(でん)筋やハムストリングといった下半身の筋肉だという。「結局、投球や打撃にも非常に重要な動き。ある意味、二刀流だからこそ」と大谷ならではの出力の高さを解説した。

 193センチ、95キロの大谷が、なぜ下半身の故障と無縁で盗塁を積み重ねられるのか。

川村准教授が重要なポイントとして挙げたのが、今年のスプリングトレーニング。専門のスタッフを付け、短距離走を多く取り入れた映像が印象に残ったという。最大の成果は股関節の活用。下半身の動きを追うと、膝の上下動がほとんどなく、「大柄な体をうまく制御できている」と負担の減少につながったとの見立てだ。

 唯一の懸念はスライディングと同時に、ブレーキの代わりに左手を地面について無防備になること。送球が一塁方向にそれた場合、ボールの直撃や内野手と交錯するリスクが出てくる。「滑りやすい米国のグラウンドで減速するための手段なので、仕方ない面もある。防具などで対策してくれたら」と願う。

 今後も期待が高まる。二刀流シーズンでキャリアハイの盗塁数は2021年の26盗塁。「来年以降、40盗塁以上を目標にしてくると思います」と川村准教授はみている。メジャーで通算盗塁数が最も多いのはイチローの509盗塁。現在、通算137盗塁の大谷がどこまで迫れるか。「スピードの部分は35歳くらいまで高い水準を保てる。(イチローに)近い数字が出てくるのでは」と予測した。

 まずは大谷自身が、熱望してきたポストシーズンで大暴れ。そして、来季は二刀流復活。マウンドと打席、塁上。一瞬たりとも目が離せない。 

 ◆シーズン50盗塁以上はイチローに続く2人目 メジャーで日本選手がシーズン50盗塁以上を記録したのは、2001年にマリナーズで56盗塁をマークし、日本選手では今のところ唯一の盗塁王に輝いたイチロー以来で史上2人目。イチローと今季の大谷を除けば07年にロッキーズの松井稼頭央が記録した32盗塁が最多で、12年にブルワーズの青木宣親(ヤクルト)が記録した30盗塁が続く。メジャー通算ではイチローの509盗塁が最多で、2位は大谷の137盗塁。松井稼の102盗塁、青木の98盗塁が続く。

 ▼川村卓(かわむら・たかし) 1970年5月13日生まれ、札幌市出身の54歳。札幌開成高3年で夏の甲子園に主将、外野手として出場。筑波大大学院卒業後、北海道・浜頓別高野球部監督を経て、2000年に筑波大硬式野球部の監督に就任。09年1月から同大学准教授。これまで100人近いプロ野球選手のフォーム解析を手掛けたほか、複数のNPB球団とも研究契約を結んでいる。