ドジャース・大谷 イチロー以来51盗塁&衝撃3連発で51本塁打 WBC世界一の地で再び歓喜

AI要約

大谷翔平投手がメジャー史上初の「50-50」(50本塁打、50盗塁)を達成し、3本塁打、6安打、球団新記録の10打点を記録。

大谷は成功率92.7%の28連続盗塁を達成し、50号2ランで快挙を達成。最終的には51-51として偉業を達成した。

大谷は過去の怪我や手術を乗り越え、7年目で初のポストシーズン進出も果たし、ファンやチームメイトから称賛された。

ドジャース・大谷 イチロー以来51盗塁&衝撃3連発で51本塁打 WBC世界一の地で再び歓喜

 ◇ナ・リーグ  ドジャース20-4マーリンズ(2024年9月19日 マイアミ)

 伝説に、また新たな一ページがしるされた。ドジャースの大谷翔平投手(30)は19日(日本時間20日)、マーリンズ戦でメジャー史上初の「50―50(50本塁打、50盗塁)」の偉業を達成した。

 初回に三盗、2回には二盗を決めて51盗塁とし、6回に49号2ラン、7回に球団新記録の50号2ランを放って到達した。9回には3打席連発の51号3ランまで放ち、数字を「51―51」に伸ばした。

 3本塁打、6安打、球団新記録の10打点は、いずれも日本選手の1試合最多記録を更新した。大リーグの120年を超す歴史の中でも、これほど記録ずくめの一日があっただろうか。間近で目撃した現地実況アナウンサーは「野球史上最高の日だ」と絶叫した。

 チームは20―4で大勝し、米7年目で初のポストシーズン進出が決まった。舞台は昨春、WBCで侍ジャパンを3大会14年ぶり世界一に導いたローンデポ・パーク。昨年、右肘の手術を受けた悲しみの「9・19」は、新たな「マイアミの歓喜」で塗り替えられた。

 日米野球ファンの注目が一身に注がれた「Quest for 50―50(50―50への探求)」。誰もが想像すらしなかった記録は、誰しもの想像を上回る形で完結した。「一生忘れられない日になるんじゃないかな」。多くの野球ファンが感謝とともに抱いた思いを、ヒーローが口にした。

 試合開始は午後4時40分。開閉式ドーム球場のローンデポ・パークの屋根や窓に激しい雨が打ちつけた。初回。先頭の大谷が打席に向かうと、フロリダ特有のスコールの雨音や雷鳴さえも打ち消すような大歓声が響いた。

 右腕カブレラから右中間フェンス直撃の二塁打でいきなり出塁。1死一、二塁となり、一塁走者フリーマンと重盗を敢行した。右足からのスライディングで三塁手のタッチをかいくぐり、手を叩いた。

 「盗塁もいけたら積極的にいくという感じ。そういう意味では良い盗塁だった」。日本選手では01年イチロー以来、23年ぶり2人目の50盗塁に到達。勢いは止まらず、2回2死一、二塁では右前適時打を放つと、直後に二盗に成功。7月22日を最後に失敗がなく、28連続盗塁成功で成功率は92・7%に上げた。

 クレイトン・マッカラー一塁コーチと二人三脚で盗塁数を激増させた。過去最多は21年の26。1月、球団スタッフに「今年は投げられないので、盗塁を増やしたい」と強い意志を伝えた。フォームや重心などスタートの切り方を改良し、タブレット端末や、自らストップウオッチで計り、同コーチとともに相手投手を研究。自身が投手でもある大谷が「肘の動きが違う」と同コーチより先に相手投手の癖を見抜くこともあったという。パワーとスピードを両立し、野手の理想を体現した。

 どよめきが止まらないローンデポ・パーク。いつの間にか、スコールはやんでいた。まだ“伝説の一日”の始まりに過ぎなかった。

 誰もが大谷にスマホのカメラを向け始めた。「50―50」まで残すはあと2本塁打。3回に左中間への適時二塁打を放つと、6回には右翼2階席へ、01年ショーン・グリーンに並ぶ球団記録の49号2ランを運んだ。いよいよ偉業に王手をかけた。

 7回の打席、快挙を期待するファンは総立ちだ。右腕バウマンのナックルカーブを左越えへ運ぶと、再び大歓声が響いた。

 「今まではやっている人が少ない中での記録が多かった。比較対象が多い中での新しい記録という意味では、違いがあるかな」。前人未到の「50―50」を決める50号2ラン。大谷は声にならない叫び声を上げてから一周した。ベンチで同僚らと熱い抱擁を交わすと、「カーテンコール」を受けて再びグラウンドへ登場。総立ちの観客席に右手を振った。

 9回は相手野手ブルーハンが登板し、「MVPコール」の中で野手から初本塁打となる51号3ラン。6安打、3本塁打、10打点はいずれも日本選手の1試合最多を更新。リーグトップの打点を120に伸ばし、05年松井秀喜の116の日本選手シーズン最多打点を塗り替えた。昨年3月のWBCで日本を世界一に導いて以来、1年半ぶりのローンデポ・パークで記録ずくめの打棒を発揮し「これだけ打てたことは人生でもない。自分が一番びっくりしている。自分のプレーしてきた球場の中で好きな球場の一つになった」と笑った。

 17日に48号を放ったが、球審の判定にも苦しみ、17、18日で5三振。この日の試合前までに「構えも含めて自分が心地良いところを探しながら(室内打撃)ケージでやっていた」と修正へ必死だった。1年前の23年9月19日。2度目の右肘手術を受け、グラウンドを離れた。オフにプロスポーツ史上最高額の10年総額7億ドル(決定時約1015億円)の大型契約でドジャースに移籍。右肘のリハビリに努めながら臨む今季は「リハビリは楽しいことばかりではない。進むこともあれば後退することもある」と沈む気持ちとも闘った。

 史上6人目の「40―40」はサヨナラグランドスラムで決め、常に人々の想像を超えてきた7年目。試合後、「50―50」Tシャツを着た仲間たちの前で英語で「Keep going!(勝ち続けよう)」と呼びかけ、大きな拍手に包まれた。昨春に侍たちを奮い立たせた「憧れるのをやめましょう」と同じ地で、大谷からの号令。後世に語り継がれるシーズンは、大谷が待ち焦がれた「10月の野球」がいよいよ訪れる。(柳原 直之)

 ≪ゴジラ一気に超えた日本選手打点最多120≫大谷の6安打3本塁打10打点はいずれも日本選手最多を更新した。5安打はイチロー7度、松井秀喜2度、新庄剛志と松井稼頭央と福留孝介が1度ずつ。2本塁打は自身が18度、松井秀が7度など10人がマーク。打点は22年6月21日ロイヤルズ戦で自身が記録した8を更新し、ド軍記録の9(06年9月28日ロッキーズ戦=ジェームズ・ロニーら)も上回った。

 大リーグで1試合で3本塁打&2盗塁をマークするのは、大谷が史上初めて。5長打&2盗塁も初めて。また50本塁打以上した選手で25盗塁以上した選手はおらず、24盗塁の07年アレックス・ロドリゲス(54本 ヤンキース)、55年ウィリー・メイズ(51本 ジャイアンツ)が最高。

 51号は打球速度113.6マイル(約183キロ)、飛距離440フィート(約134メートル)の特大弾。スタットキャストの計測が始まった15年以降、113マイル以上の本塁打は16本目で、ヤンキース・ジャッジを抜き単独2位。トップはヤンキース・スタントンの18本。440フィート以上のアーチは移籍後13本目で、ジョク・ピダーソン(現ダイヤモンドバックス)を抜いて球団単独最多となった。