【中日】仁村徹氏 バッティング技術向上は落合博満氏のおかげだった「二塁走者が落合さんだと…」

AI要約

1988年、中日が4回目のリーグVを達成。6番に起用された仁村氏の打撃技術が向上したのは、4番・落合博満氏の〝鈍足〟のためだった。

選手たちがお互いを認め合い、チーム力を高めていった1988年。イメージすることの大切さも体験した。

仁村氏が現役最後の試合でイメージ通りの打撃を成功させたエピソード。

【中日】仁村徹氏 バッティング技術向上は落合博満氏のおかげだった「二塁走者が落合さんだと…」

 中日・仁村徹編成統括(62)とドラゴンズ応援大使を務めるSKE48・熊崎晴香(27)との対談第4回は中日が4回目のリーグVを飾った1988年を回顧。2位・巨人に12ゲーム差をつけてのぶっちぎりVとなったこの年は、シーズン中にチーム力が上がっていく実感があったという。6番に起用された仁村氏の打撃技術がグングン向上していったのは、4番・落合博満氏の〝鈍足〟のおかげだった。

【仁村編成統括&SKE48熊崎晴香対談(4)】

 熊崎 仁村さんは現役時代には何番を打っていたんですか。

 仁村 いろんな打順を経験しましたけど、星野監督の下で優勝した1988年は夏場から6番を打ってましたね。4番が落合博満さん、5番が宇野勝さんで6番が僕。でも、落合さんの後ろを打つのがまた大変だった。

 熊崎 どうしてですか?

 仁村 先頭の落合さんが出塁して、次の宇野さんもヒットか四球だと無死一、二塁になる。そうすると送りバントをしなければいけない。でも、落合さんは足が遅いから普通のバントだとアウトになるんですよ。1度、三塁線にいいバントを決めて走っていったんだけど、一塁にボールが送られてこない。あれ? って思って見たらサードで落合さんがアウトになっている。うそだろ? って思ってね。それからは〝もうサードにはバントはやらない〟と決めてファースト側かピッチャーの前に転がすようにした。それで(バントの)技術が上がったんですよね。

 熊崎 ある意味、落合さんのおかげで、バントがうまくなったんですね。

 仁村 送るケースも大事なんですけど一死一、二塁で二塁走者が落合さんだとクリーンヒットを打っても、ホームに帰ってこれない。どうやったら落合さんの足でもかえすことができるか?それを考えるようなった。

 熊崎 長打を打つということですか?

 仁村 僕は長打をそんなに打てる打者じゃない。それで考えたのがカンチャンのヒット。詰まった打球を打ってファーストの頭を越える。ファーストの頭上に打てばライト線を転がっていくから、誰でもかえってくることができる。それをずっと狙ってましたね。ホームランは打てないけど、カンチャンのヒットは簡単だったんです。

 熊崎 いやいや、簡単じゃないですよ。

 仁村 「落合さんをどうやってかえすか」という考えから、バッティング技術がどんどん上がっていった。

 熊崎 バントだけでなく、右打ちの技も落合さんのおかげなんですね。

 仁村 88年は選手みんながそうやって考えて、どんどんチームが勝つような感じになっていきましたね。お互いを本当に認め合っていました。落合さんだけじゃない。レギュラーみんなが。自分はこういうところはあんまり良くないけど、こういうところがたけてるから、いいところをみんなで出し合おうっていう雰囲気だったんです。

 熊崎 選手の皆さんでコミュニケーションを取っていたんですか。

 仁村 1番を打っていた彦野とは家が近くてね。彦野は運転免許を持ってなかったので僕が送り迎えをしてましたけど、いつも一緒に野球の話や反省会をしてましたね。選手みんなタイプが違うんですよ。落合さんみたいに簡単に打つ人もいれば、相手のクセを見て打つ人もいる。例えば僕が全然打てない投手も宇野さんは打っていたし、宇野さんが苦手な投手は僕が得意だったから、かみ合うんですよ。どっちかが打てば点が入るから。

 熊崎 チームメートの得意なところを全部理解した上で戦っていくことで、チーム力がどんどん上がっていく。

 仁村 上がりますよね。ピッチャーも含めてそうなんですよね。攻撃だけでなく、守っていても試合の流れをみんなが分かってやってました。流れを読むことも大事だし、こうなるんじゃないかとイメージもしていた。長嶋茂雄さんはサヨナラホームランを打つイメージをして天覧試合に臨んで、その通りになったという話を聞いたことがあるけど、イメージすることは大事だと思います。

 熊崎 どんなイメージをしていたんですか。

 仁村 僕は現役最後のロッテ時代(1997年)にイメージ通りの打撃ができたことが2回あったんです。そのころは代打での出場だったので(5月20日の近鉄戦の)前日にストッパーの赤堀投手との対決をシミュレーションしていたんです。初球はここにきて、2球目、3球目はここ、4球目のボールをセンター前にはじき返すというふうにね。すると本当に8回のチャンスに代打で赤堀投手と対戦となった。初球は外にスライダーと配球を読んでいたら本当にその通りにきて、鳥肌が立ちました。2球目もシミュレーション通りのボールが来て、1―1。3球目は外の真っすぐでファウルを打って追い込まれるのですが、4球目のインコースをセンター前に打つとイメージしていたら本当にセンター前タイムリーで逆転。その通りになった。こんなことあるんだと思っていたら、その2日後の試合でもチャンスの場面に代打で出て、赤堀投手と対戦。今度はこういうふうに配球してくるだろうと読んでいたら、また全部その通りになって逆転打を打ったんです。

 熊崎 すごい!

 仁村 野球は流れを読むこともそうだし、イメージすることも大切だと思いましたね。