【川崎の新エース&新戦力が躍動する意味(1)】鳥栖戦の決勝弾を決めた山田新。「持っている」と「やべぇ」の同居の中で……先発落ちの試合前日には鬼木達監督との話し合い

AI要約

山田新がホームのUvanceとどろきスタジアムで行われた試合で劇的な決勝ゴールを挙げ、感極まりながらファンと喜びを分かち合った瞬間を振り返る。

山田は緊張感と期待に胸を膨らませながら試合を進め、必ずチャンスが来ると信じていた。

自身のプレーについても照れながら振り返り、一発でのゴールを目指していたことを語っている。

【川崎の新エース&新戦力が躍動する意味(1)】鳥栖戦の決勝弾を決めた山田新。「持っている」と「やべぇ」の同居の中で……先発落ちの試合前日には鬼木達監督との話し合い

 脳裏にパッとひらめいた思いを言葉に変換しようとして、急に照れくさくなったのか。川崎フロンターレのFW山田新の声のトーンが急に小さくなった。

「……まあ、自分的には持っているな……と思います」

 何に対して「持っている」と感じたのか。答えはホームのUvanceとどろきスタジアムにサガン鳥栖を迎えた13日のJ1リーグ第30節。2-2のまま後半アディショナルタイムに突入した100分に、山田が決めた劇的な決勝ゴールにある。

 鳥栖のロングフィードをDFセサル・アイダルがはね返し、こぼれ球をボランチ橘田健人が左サイドバック三浦颯太へ展開。利き足の左足から放たれた縦パスに、前方にいたFWマルシーニョを抜け出してカウンターが発動された。

 鳥栖陣内の左サイドを一気に抜け出したマルシーニョが、ペナルティーエリアの左側から右足アウトサイドでラストパスを送る。ニアサイドへは山田が、フリーの状態で詰めてくる。土壇場で熱戦に決着がつくと、誰もが信じて疑わなかった。

 しかし、一気に高まった歓声がため息に変わる。山田が空振りした瞬間だった。

「やべぇ、と思って。けっこう勢いをもってニアへ入っていって、マルシーニョから本当にいいボールがきたのに当たらなくて、ファーに誰かがいるかと思ったら」

 天を仰ぎたくなる思いをこらえながら、山田はステップが合わずにそらしてしまったボールから目線を切らさなかった。振り向いた先にいたのは鳥栖のDFキム・テヒョン。韓国出身の23歳もまた、山田が空振りするとは思わなかったのだろう。キム・テヒョンがクリアしきれなかったボールがニアへはね返ってきた。

「何も考える余裕もなかったけど、とにかく緊張しました」

 無我夢中で飛びついた山田が、頭で正真正銘の決勝弾を叩き込む。感極まったあまりに、ゴール裏のスタンドを埋めたファン・サポーターへ飛び込み、至福の思いを共有した山田は「本当は一発で決めたかったんですけど」と再びはにかんだ。

「試合がけっこう止まっていたし、実際にアディショナルタイムが7分と出ていたので、みんなで『7分あるぞ』と言っていたし、自分的には必ずチャンスがくると思っていたし、そのときには絶対に点を取ると言い聞かせていました」