Jリーグに刻まれた“伝説の16分間” 鹿島の闘志が漲った史上初の再開ゲーム【コラム】

AI要約

サッカー界における気候変動の影響が表面化し、試合中止や延期が増えている。

過去にも豪雨のため試合が中断した際、後半から再開された事例がある。

異例の対応となった2009年の試合では、劣勢から16分間の再開で逆転を目指す鹿島アントラーズの奮闘が描かれた。

Jリーグに刻まれた“伝説の16分間” 鹿島の闘志が漲った史上初の再開ゲーム【コラム】

 近年、顕著になった気候変動はサッカー界にも影響を及ぼしている。予想を超える事態に安全意識も高まり、豪雨となれば試合時間を遅らせたり、中止の決定が下されることが増えてきた。

 8月24日に行われた浦和レッズが川崎フロンターレをホームに迎えたJ1リーグ第28節の試合も、豪雨のため前半を終了した時点で中止となった。試合は11月22日に後半から再開させることが発表されている。

 90分間のゲームを最初からやり直すのではなく、途中から再開する最初のケースとなったのは、2009年9月12日に鹿島アントラーズのホームであるカシマサッカースタジアムで行われた試合がそれである。奇しくも相手チームはこちらも川崎で、豪雨のため後半29分で中止となり、10月7日に残り16分間を消化する前例のない対処となった。

 当時、このJ史上初の残り時間を消化するという異例の試合に興味をそそられ、16分の攻防を取材するためにカシマサッカースタジアムへと足を運んだ。後半29分まで刻まれた試合のスコアは1-3(得点者は鹿島がマルキーニョス、川崎が鄭大世2ゴール、ジュニーニョ)で鹿島側から見れば劣勢の展開からの再開となった。そして、鹿島は16分間での状況逆転を目指し、全身全霊を賭けて戦った。

 試合前、ピッチでウォーミングアップをする鹿島の選手たちに交じって、指揮官であるオズワルド・オリヴェイラの姿があった。監督が試合前に姿を現すことはあまり多くはないが、それでもないことではない。しかし、それはベンチから選手たちを見守っていることがほとんど。このブラジル人監督はピッチの中に入り、選手のウォーミングアップをサポートした。

 手にしたボールをピッチでバウンドさせ、そのボールをディフェンス陣の要となるセンターバック(CB)の伊野波雅彦がヘディングで対応する。このヘディングプレーの練習が攻撃への布石なのか、ゴールを死守するためのものなのかは、この時には分からなかったが、コーチではなく最高指揮官のオズワルド・オリヴェイラが自ら練習をサポートするその姿を見て、劣勢の状況を覆そうとする闘志がチームに漲っていることを強く感じた。

 そして、メインスタンド下のウォーミングアップスペースで鹿島は選手、スタッフを合わせた円陣を組み試合へと臨んだ。