武居由樹、注目の日本人対決を制し初防衛「那須川選手に勝ってというのが自分のストーリー」

AI要約

WBO世界バンタム級タイトルマッチで武居由樹が比嘉大吾を判定で下し、初防衛に成功。比嘉は引退を表明。

武居は冷徹なパンチを繰り出し、最終12回で逆転勝利。敗れた比嘉は最後まで強い気持ちを見せた。

武居はボクシングの引き出しを増やしながら、那須川天心との対戦に備える決意を示した。

武居由樹、注目の日本人対決を制し初防衛「那須川選手に勝ってというのが自分のストーリー」

<プロボクシング:WBO世界バンタム級タイトルマッチ12回戦>◇3日◇東京・有明アリーナ

 元K-1スーパーバンタム級王者でWBO世界バンタム級王者の武居由樹(28=大橋)が同級1位の元WBC世界フライ級王者比嘉大吾(29=志成)を3-0の判定で下して初防衛に成功した。一時は同じトレーナーから指導を受けるなど、互いを尊敬する間柄の決戦。勝利に徹し、区切りのボクシング10戦目で、注目の日本人対決を制した。今後はボクシングの引き出しを増やしながら同じ格闘家から転向した那須川天心の挑戦を受けるまで勝ち続ける。敗れた比嘉は引退を表明した。

    ◇   ◇   ◇

 情けを捨て、冷徹にパンチを打ち続けた。最終12回。11回のダウンで一気に接戦に持ち込まれた武居は覚悟した。「このままなら負ける。倒しにいこう」。右アッパー、左ストレートと連打で、比嘉をKO寸前まで追い込んだ。11回終了時で、ジャッジ1人は武居の合計2ポイントリードも、残り2人はドロー。最終回のポイントが勝敗を分けた。試合終了のゴングが鳴ると、約1万5000人の観客から大歓声が響いた。

 勝ち名乗りを受けたリング上では、まず挑戦者への思いを口にした。

 「(比嘉)大吾さんと最高の試合ができて良かった。打たれ強く気持ちも強い。ガンガン前にきて、本当に感謝しています」

 事実上の「同門対決」だった。K-1から転向した約3年前から、比嘉のトレーナーで、マラソンの名伯楽、故小出義雄氏の教え子でもある野木丈司氏のフィジカル練習に参加。対戦決定後に離脱して距離を置いたが、互いに知り尽くす間柄だった。そんな中で身長10センチ、リーチで9センチ上回る利点をいかしながら、勝ちきった。

 今年5月、東京ドームで世界初挑戦。K-1から転向9戦目でボクシング世界王者となったが、決して浮かれることはなかった。バンタム級はWBA王者が同門でもある井上拓真、WBC王者が中谷潤人、IBF王者が西田凌佑と日本人王者が独占中。「世界王者4人の中で一番、自分の立ち位置が低い」との意識が芽生えた。初防衛戦に向けて、転向後からタッグを組む元世界3階級制覇王者八重樫東トレーナーとほぼ合宿漬けの毎日を送った。王者になっても変わらない貪欲な姿勢が初防衛につながった。

 リング上のインタビューでは10月14日にボクシング転向5戦目を迎えるWBA世界バンタム級2位の那須川天心にエールを送った。K-1時代から対戦したかった相手でもある。「早くこの舞台に上がってこいという気持ち。那須川選手に勝ってというのが自分のストーリー」。比嘉との日本人対決は制した。天心戦の夢を実現するためにも、王座防衛を重ねていく。【田口潤】