高校No.1野手の呼び声高い 花咲徳栄・石塚裕惺の将来像は?【高校生ドラフト候補チェック】

AI要約

石塚裕惺は高校野球界で最注目の存在となりつつある遊撃手であり、打撃・守備・走塁の全てで高い能力を持つ。

バッティングでは力強いライナーを多く放ち、ホームランを量産するアーティストタイプではなく、確実性と長打力を合わせ持つ。

守備面でもショートでのプレーは確かで、内野の中心として活躍する可能性が高いため、プロでも期待されている。

高校No.1野手の呼び声高い 花咲徳栄・石塚裕惺の将来像は?【高校生ドラフト候補チェック】

 夏の甲子園も終わり、今年の高校3年生年代のイベントはU18アジア選手権と国民スポーツ大会を残すのみとなった。徐々にドラフトの話題も増えてくるが、高校生の野手で最注目の存在となりそうなのが石塚裕惺(花咲徳栄・遊撃手)だ。石塚の評価が一気に上がることになったのが今年4月に行われたU18侍ジャパンの強化合宿である。

 この合宿では国際大会に合わせて木製バットを使用して行われ、慣れないバットに苦しむ選手も多かったが、石塚は打撃練習でも軽々と柵越えを連発して見せたのだ。その打球速度や飛距離は大げさではなく大学日本代表と比べても遜色ないものだった。

 そして石塚の持ち味はバッティングだけではない。守備と走塁でも高いレベルにあるのだ。ショートの守備は派手なプレーをするタイプではないものの、プレーに丁寧さがあり、三遊間の深い位置からノーバウンドで一塁まで強いボールを投げられるだけの肩の強さも備えている。この夏は地方大会、甲子園の8試合で失策は0だった。

 また走塁でも甲子園の新潟産大付戦の第1打席でヒットで出塁するとすかさず盗塁成功。さらに続く打者の浅めのセンターフライでもタッチアップで三塁を陥れており、スタートの良さとスライディングの速さも見事だった。体つきも高校生とは思えないほど上半身、下半身がしっかり鍛えられており、フィジカル面での充実ぶりも高い評価に繋がっていると言えるだろう。

 ではそんな石塚はプロではどんなタイプの選手になることが期待できるのだろうか。まずバッティングに関しては強打者タイプではあるものの、ライナー性の打球が多く、ホームランを量産するような“アーティスト”タイプではないように見える。実際、高校通算本塁打数も26本(※夏の甲子園大会のアンケートの回答)と際立って多いわけではない。ただライナーでそのままスタンドに届くという打球も多く、プレーする本拠地によっては20本以上のホームランは十分期待できるだけのポテンシャルはあるだろう。

 そして、打撃以上に気になるのが守備面ではないだろうか。高校生の時はショートを守っていても、大学や社会人、プロに進むとサードやセカンド、さらには外野に転向するケースも多い。それだけに石塚が上のレベルでもショートができるかという点は、プロのスカウトの間でも議論となっている部分だろう。

 ただ、個人的な意見としては、十分ショートで勝負できるだけのポテンシャルは秘めていると感じる。先述したように肩の強さと脚力が十分高いレベルにあるというのももちろんだが、それ以上に大きいのが意識の面だ。シートノックを見ていても雑なプレーは全くなく、併殺でのスナップスローなどを見ていてもセカンドの選手が送球しやすいところをしっかり考えて投げているように見える。

 内野の守備というと難しい打球を処理するプレーにどうしてもスポットライトが当たるが、まず確実にアウトをとれるというのが第一歩であり、その点が石塚には十分に備わっていることは間違いないだろう。もちろんチーム事情によってセカンドやサードにコンバートされる可能性もありそうだが、打力のあるショートは貴重だけにまずはショートに挑戦する方がチームにとってもプラスは大きいはずだ。

 選手のタイプとしては広角に鋭いライナーを放ち、守備力も備えているということから現役選手ではショートではないものの牧秀悟(DeNA)がイメージが近いのではないだろうか。またショートということであれば、西武時代の中島宏之(中日)も選手としてのタイプは重なる部分が多い。どちらにしても長打力と確実性を備えながら、守備でも貢献できる選手と言える。太い内野の中心となれる選手が欲しい球団は多いだけに、最初の入札で1位指名を受ける可能性も高いだろう。

文●西尾典文

【著者プロフィール】

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。