ラウドルップ躍動でウルグアイ一蹴、6年後の欧州王者の「強力カウンター」【2026北中米W杯に「忘れられた」スラム街のサッカー場】(2)
世界中にはスラムにあるスタジアムもあり、メキシコにもそのようなスタジアムがある。
蹴球放浪家・後藤健生が訪れたネサワルコヨトルはスラムのような街だったが、ワールドカップ開催期間中は危険を感じなかった。
街の子どもたちが外国人に興味を持ち、サインや写真を求める光景が見られた。
世界中、至るところにスタジアムがある。蹴球放浪家・後藤健生が渡り歩いた先には、スラム(都市部で極貧層が居住する過密化した地区)の中のスタジアムもある。2026年のワールドカップが行われるメキシコにも、そんなスタジアムがあった――。
実際、行ってみるとネサワルコヨトルは低層の粗末な住宅が延々と立ち並んでいる庶民的な、あるいはスラムのような街でした。選手団やサポーター、メディアを乗せたバスが、そんな街の中をスタジアムに向けて走っていきます。
危険はなかったのでしょうか……。
ラテン・アメリカのスラムといえば、ブラジルのファヴェーラやアルゼンチンのビシャが有名ですが、そんな所でワールドカップを開催するのは無理でしょう。
ブエノスアイレスの名門、サンロレンソ・アルマグロのスタジアムは、ブエノスアイレス市最大のビシャの真ん中にあるので「サンロレンソのスタジアムまで」というと、タクシーに乗車拒否をされてしまいます(「蹴球放浪記」第9回「乗車拒否の理由」の巻)。
エクアドル最大のスタジアム、「エスタディオ・モヌメンタル」の目の前にも、広大なスラム街が広がっています。1995年にU-17世界選手権(現、U-17ワールドカップ)を観戦に行ったときには、かなり危険な臭いがしたのを覚えています。
しかし、ネサワルコヨトルという街では危険はまったく感じませんでした。少なくとも、ワールドカップ開催期間中は……。
バスを降りて、スタジアムまでの道すがら公園に立ち寄ったりすると、近所の子どもたちが寄ってきます。ふだんは、こんな地域に外国人は立ち寄ったりしませんから(危険なうえ、見るべき名所もない)外国人が珍しいのでしょう。外国人と見ると一斉にノートとペンを差し出してサインを求めてきます(漢字のサインは喜ばれます)。そして、カメラを向けると、あちこちから子どもたちが駆け寄ってきます。
ただでさえ、メキシコは若者が多い国です。1986年当時の人口は7700万人ほどでしたが、現在では人口は1億3000万人(世界10位)と、40年の間に倍近くに増えています。まして、世界中どこに行っても、スラム街というのは子どもが多いものです。