「馬庭君を中心に圧倒された」初戦で大社旋風に飲まれ…プロ注目右腕・今朝丸裕喜が振り返る“一瞬の夏” 試合後は涙見せずも「宿舎で主将が…」

AI要約

2年連続センバツ準優勝の報徳学園が初戦で大社に敗れ、注目の右腕・今朝丸は涙を見せず甲子園を去る。

今朝丸は過去の苦しい経験から涙を流すことは少なく、2年連続の準優勝に悔しさを募らせる。

夏の甲子園に向けて徹底したトレーニングを積み、指導者やチームメイトからのサポートを受けながら成長を遂げていた。

「馬庭君を中心に圧倒された」初戦で大社旋風に飲まれ…プロ注目右腕・今朝丸裕喜が振り返る“一瞬の夏” 試合後は涙見せずも「宿舎で主将が…」

 その目はすでに乾いていたのか、それとも元々潤んでいなかったのか。

 2年連続センバツ準優勝の報徳学園が初戦で大社に1-3で敗れた。大社はそのまま創成館、早実を破り今夏の甲子園で旋風を巻き起こすことになるが、大会屈指の本格派右腕として注目されてきた今朝丸は7回途中、3失点で降板。大社の「ジャイアントキリング」が話題をさらう中、最速151キロ右腕は初戦で甲子園を去ることになった。

 試合後、取材エリアに姿を見せた今朝丸の目に、涙はなかった。センバツで2度の挑戦もあと一歩届かなかった日本一。頂を目指し、乗り込んできた夏の舞台だった。おそらく、試合終了直後はその現実をすぐに受け入れられなかったのかも知れないが、最後まで涙ひとつ見せることはなかった。

 そんな今朝丸の表情が、筆者はどうしても気になったのだ。

 胸中はどんな思いだったのだろうか――。

 夏の甲子園後、わずか2日間の休息を経て体を動かし始めたという今朝丸に、当時のことを細かく尋ねようとすると、穏やかな表情を浮かべてすぐに言葉を発した。

「正直、試合が終わった直後は目が少しウルウルはしていたんです。でも泣く、というのはなかったです。自分は元々、野球ではあまり泣かない方なんで」

 試合の勝敗で初めて泣いたのは高校に入学してからだった。昨夏、県大会5回戦で神戸国際大付に敗れた試合後だ。自らが決勝打を浴び、試合後のミーティングでは大粒の涙をこぼし、終始タオルで顔を覆っていた。

 さらに今春センバツの決勝戦後。健大高崎を相手に6安打、3失点と粘投しながら僅かな差にまたしても日本一に届かなかった。センバツ大会で敗れて泣く選手は少々珍しいが、2年連続準優勝という現実は今朝丸にとって屈辱でしかなかった。

「2年前は初めて決勝に行っての準優勝だったのでそこまでの悔しさはなかったんですけど、さすがに2年連続はちょっと……。銀メダルは2個もいらないなって」

 センバツ後の春の県大会はベンチから外れ「ミニキャンプ」と本人が言うように、夏に向けての身体作りに没頭した。グラウンド横にあるトラックでVジャンを着込んでのランニングや、トレーニング、打者をつけてインコースぎりぎりに投げ込む練習を何度も繰り返した。投手育成を担当する磯野剛徳部長によると「夏にもう一度甲子園に戻るためにと、どんなキツいメニューにも今朝丸は最後までついてきた」という。

 大角健二監督はそんな今朝丸を見て「やるべきことをやってきたので、この夏は怠慢なことをしない限りは何も(厳しいことは)言いません」と話していた。 

 県大会の初戦の舞子戦では、初回から長打を浴び、3回まで毎回失点を重ねて5回4失点。3回には相手打者の頭部に死球を与えるなど大荒れの夏の幕開けとなったが、大角監督はエースへ言葉を荒らげることはなかった。むしろ、試合後にこんな言葉を向けた。

「次の試合はしっかり修正してくれるでしょう」