IOCはなぜ認めた? 新型コロナ陽性下での出場で批判も受けた米ライルズが明かした舞台裏「僕自身は問題ないという気持ちだった」

AI要約

ボツワナのスプリンター、ノア・ライルズが新型コロナウイルス陽性のままパリ五輪に参加した経緯。

ライルズは医師の診断が必要なほどの高熱を抱えながらも競技に出場し、感染リスクを最小限に抑えて警戒を行った。

批判を覚悟しながらも、自身の決断を肯定し、今後の競技への意欲を語っている。

IOCはなぜ認めた? 新型コロナ陽性下での出場で批判も受けた米ライルズが明かした舞台裏「僕自身は問題ないという気持ちだった」

 世界に小さくない“衝撃”を与えたレースの舞台裏が明らかになった。

 波紋を呼んだのは、現地時間8月8日に行われたパリ五輪の陸上男子200メートルだ。ボツワナのレツィレ・テボゴが金メダルを手にしたレース後、銅メダルに終わったノア・ライルズ(米国)が新型コロナウイルス陽性であったと明らかにしたのである。

 4日前に行われた男子100メートルで金メダルを獲得していたライルズだけに、個人2冠への期待は高かった。しかし、黒いマスクを着けて入場したこの日は明らかに精彩を欠いた。それもそのはずで、当日の体温は38.8度もあったという。

 結果的に3位にはなったものの、走り終えた直後にはトラック上に倒れこんだライルズ。医療スタッフに車いすで運び出される姿は、なんとも痛々しいものがあった。

 ただ、無論、コロナ感染下で出場を決意した27歳を疑問視する声が噴出。さらに本人が閉会式の行われた8月11日(現地時間)にパリ市内のナイトクラブでパーティーしていたことが発覚し、「医師の診断を必要とするほどだったはずだ」(英紙『Daily Mail』や「それは美談にならない」と国内外で批判が上がった。

 いまだ批判を受ける名スプリンターは、新型コロナ陽性の状態でレースに出場した理由を自ら明かしている。現地時間8月21日、米放送局『NBC』の番組「Today」に出演したライルズは「何が何でもレースに出場したいと思っていた」と告白。その上で、国際オリンピック委員会(IOC)に出場可能か否かを幾度も確認。「隔離して他の人々と接触しなければ参加可能だ」と指示されたという。

 その後、選手村ではなく別のホテルに移動し、“自主隔離”を実施したライルズは、ウォーミングアップの際もマスクを着用し、「他の選手と一緒のテントではなく、隅にあった別のテントにいた」と感染を広めない行動を徹底。無事に競技参加を認められたという。

 メダル授与の際もIOCに対して「メダルを渡してくれるのは自分よりも年齢が上の人たちだったから、彼らや出席するほかの選手が、自分が参加することに問題ないかを確認した」というライルズは、批判も受けたレース参加を次のように振り返っている。

「コロナに感染しても僕自身は『オーケーだ。問題ない』という気持ちだったよ。これまでのキャリアを通じて、喘息や他の病気に僕は悩まされてきたからね。だから、僕のキャリア全体を振り返った時に、ノア・ライルズの人生のほんの一日に過ぎないと思っていた。『別のハードルを乗り越えて戦おうとしているんだ』と考えていた」

 世間からの逆風は覚悟の上だったというライルズ。すでに体調は回復しており、番組では4年後のロサンゼルス五輪参戦についても「あのオリンピックの雰囲気を、自分の地元で味わえたら本当に素晴らしいだろうね」と語っている。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]