「公道を馬が歩いている!」パリ街中で遭遇した“馬が身近すぎる”驚きのフランス馬事情「馬糞を見るのも日常」「馬術の競技人口は日本の約100倍」

AI要約

パリを訪れた記者が驚くほど街中に馬がいる様子を報告。警察騎馬隊が市街地を歩く姿や、馬術競技の浸透具合を伝える。

フランスでは馬具を含む馬術用具が総合スポーツ用品店で豊富に取り扱われており、競技人口の多さが表れている。

さらに、地下鉄駅の改札出口が競馬のスタートゲートに似た仕組みになっていることも報告されている。

「公道を馬が歩いている!」パリ街中で遭遇した“馬が身近すぎる”驚きのフランス馬事情「馬糞を見るのも日常」「馬術の競技人口は日本の約100倍」

 あの“バロン西”こと西竹一以来92年ぶりのメダルを獲得した「初老ジャパン」の活躍もあり、日本でも注目を集めたパリ五輪の馬術競技。人馬への配慮とリスペクトを欠かさなかったヴェルサイユ開催の独特な雰囲気の背景には、日常生活に馬が溶け込んだ欧州ならではの文化があった。競馬好きの記者が現地で目にしたフランスの“リアルな馬事情”をレポートする。(全2回の2回目/前編へ)

「街中に馬が当たり前のようにいる……」

 パリに着き、驚くのは街中を歩く馬の存在だ。正確には警察騎馬隊。五輪での観光客増を見越してか、テロ警戒からなのか、人馬2組がパリ中心部を闊歩する様子を毎日のように見かけた。

 公道の自転車レーンや繁華街エリアを縦横無尽に歩く姿に、観光客と思しきひとたちは写真や動画に収めようとする。かたや、パリ在住と思われる現地の人々は一瞥したのち、素通り。むしろ写真撮影している人が珍しいのか、そちらに目をやっていたりする。なお、騎馬隊が朝や昼ごろに街中を歩くのはイギリスなど欧州の他の国でもよく見られる。ちなみに馬糞が路上に落ちているのも「あるある」。日本では牧場や競馬場などに行かないと馬とは触れ合えないものだが、パリでは身近に馬がいる生活が当たり前。もし日本の公道で馬と出会ったら、なにかしらのトラブルを想起してしまいそうだが、欧州では日常の光景となっている。

 それだけ馬がいる環境が当たり前だからだろうか。馬術という競技自体もかなり浸透している印象だ。

 パリ五輪のスポンサーにもなっているスポーツ用品店「デカトロン」。アウトドア商品やスポーツグッズを総合的に取り扱う大型店舗の中を見ると、「Equitation」(仏語:乗馬、馬術)のコーナーがある。卓球やバドミントンのエリアより面積は大きく、10mほどの棚2つを使ってムチやヘルメット、乗馬用の靴だけでなく、ブラシや馬用の餌、子ども向けの馬の絵本、競技に必要なジャケット類まで売られている。

 日本でいえば、「スポーツデポ・アルペン」や「スーパースポーツゼビオ」が馬術用具を扱っているようなもの。筆者が知る限り、総合スポーツ用品店で馬術用具が売られているのは見たことがない。フランスの競技人口は67万人(フランス馬術連盟に登録している会員数/2023年)を超えている。一方、日本は6830(日本馬術連盟に登録している会員数/日本馬術連盟『令和5年度事業報告』より)という数字にとどまっている。そういった競技者の存在がスポーツ用品店の取り扱いにも影響していると言えるだろう。なお、商品の取り扱いは男性向けより女性向けのアパレルエリアが大きく、五輪種目でも男女が別け隔てなく出場する競技の特性が表れている印象を受けた。

 ちなみにこれは関係ないかもしれないが、パリの地下鉄駅の改札出口の一部は、競馬のスタートゲートと同じ構造を採用。人が立つと自動で左右の扉が中央から外側へと開く仕組みになっている。ゲートが開く音も競馬のスタート時とほぼ同じ。騎手とならなくても、地下鉄に乗っているだけでジョッキーの気分を味わえるのだ。