夜中3時まで大社の映像を研究 「普通に勝負したら大社さんのペースになる」 神村学園・小田監督が仕掛けた積極果敢な攻撃

AI要約

神村学園が大社を8-2で下し、2年連続のベスト4進出を果たす。プロ注目のスラッガー、正林輝大が不振から脱出し、今夏初の打点を挙げる。小田監督の戦略も功を奏し、強気の攻撃で大社を突き放す。

準々決勝での神村学園は、大社に勝るとも劣らない熱い応援を受ける中、小田監督の徹底した分析と選手たちの奮起が勝利につながる。正林のタイムリーをきっかけに打線が爆発し、勝利を手にする。

小田監督の熱い思いが試合中も燃え続け、次なる目標は決勝進出。正林もチームと共に全力で勝利を目指す意気込みを示す。

夜中3時まで大社の映像を研究 「普通に勝負したら大社さんのペースになる」 神村学園・小田監督が仕掛けた積極果敢な攻撃

 ◆全国高校野球選手権準々決勝 大社2―8神村学園(19日、甲子園)

 4番・正林輝大の今大会初打点で勢いづいた神村学園(鹿児島)が8―2で大社(島根)を下し、2年連続のベスト4進出を果たした。

 プロ注目のスラッガーは、3回戦までの3試合で13打数1安打の打率7分7厘という大不振。17日の試合後、宿舎で小田大介監督と2人きりで話し合い、打てずに一人で悩んでしまっているその姿に「自分勝手なことをしているんじゃないか」「やるべきことはチームを勝たせるためのバッティングだろ」と〝説教〟を受けたことを明かし「自分のやってきたことを信じて、思い切ってスイングしました」と奮起した1点リードの7回、大社を突き放す、今夏初打点となる左前タイムリー。「4番としていいところで一本が打てたので、チームが波に乗ってくれたんじゃないかと思います」という正林の〝不振脱出打〟で火が付いた打線は、この回一気に4得点を挙げ、大社を突き放しての快勝を収めた。

 「応援がすごい、というのは最初から分かっていることでした。でも、その近くでプレーができて、とても楽しかったです」

 ライトを守っていると、その左側、一塁側アルプスから、大社の大応援が聞こえてくる。そのボリュームたるや「体に響く、という感じでした」。1回戦で今春のセンバツ準優勝・報徳学園(兵庫)を、3回戦でも古豪・早稲田実(西東京)と、名だたるビッグネームを撃破して、今夏の甲子園に大旋風を巻き起こしてきた大社との準々決勝は「球場の9割の応援は大社さん。百も承知です」という小田監督は、そのアウェー感も織り込み済み。夜中の3時頃まで大社の試合映像を研究し、球場入りする直前まで「他のチームの準々決勝の試合はどうでもよかった」と徹底的に大社を分析。大社のエース左腕・馬庭優太が先発を回避、背番号10の右腕・岸恒介が先発してきたのは「99%、馬庭君だと思っていました」と先発予想こそ外れたが、岸の特徴ももちろん把握済みだった。

 投球モーションを起こしてから捕手のミットにその投球が収まるまでのタイムが1秒2を切るか切らないかが、盗塁の成否を左右すると言われるが、岸のクイックはなんと1秒を切る0・9秒台。2回、2人連続で二盗失敗と序盤のチャンスをつぶし続けたが、4回1死からは四球で出塁した正林に二盗のサインを出し「正林は打てなくても四球で出れば、走れる選手なんで」と小田監督が評するように、正林は二盗に成功。これで大社のペースをかき乱し、この回4四球を選んで2点目を奪うなど「普通に勝負したら、大社さんのペースになると思ったんでかなり積極果敢に行きました」と小田監督。2―2と追いつかれた直後の5回、相手失策が絡んでの勝ち越し点を奪うと、7回にいよいよ、5回途中からマウンドに上がっていた馬庭を捉え、チーム待望の「正林の初打点」まで飛び出したのだ。

 「外の真っすぐが来るだろうというのは頭の中にあって、その真っすぐが来たので、思い切っていきました。とてもうれしかったです」

 7回1死一、二塁。ここで4番・正林が打てば、チームの士気も上がる。相手エースとの一騎打ちを制するか否かは、勝敗を左右する重要な局面だ。133㌔の外角ストレートに逆らわずに左方向へ打ち返してのタイムリーが4点目。続く5番・岩下吏玖が左越えの三塁打で続いて2者が生還、さらに6番・上川床華月が中越え二塁打で7点目と4連打。正林の今夏17打席目での初打点がチームを勢いづけたとあって「めちゃくちゃうれしかったです」と三塁側ベンチから右手を大きく振り下ろしてのガッツポーズで小田監督が喜びを表したのは「大事な場面でよく打ってくれた、というのを、言葉じゃなくて表現しようと思った」からだった。

 その小田監督が愛してやまない学園ドラマ「スクールウォーズ」は、生徒たちと真正面からぶつかり合いながら、弱体ラグビー部を鍛え上げ、全国制覇にまで導く熱血教師のストーリーで「あの熱さです。生徒に対する情熱。大事なお子さんを自分も預かっている以上は、立派な男前、いい男に育てたい」。その熱き思いは、甲子園での戦いの真っ只中も不変どころか、燃えさかる一方。この日もスタメン表に選手の名前を記入する際、BGMとして流したのは、その「スクールウォーズ」の主題歌の「HERO」。2年連続の準決勝進出にも「準々決勝、準決勝、決勝。全部『決勝』とつくじゃないですか。だから、準々決勝からがすべて決勝戦。1、2、3回戦が簡単だったかといえばそうじゃない。でも、ホントにここからがまた、もう一段階上のレベルの勝負。この三回の決勝戦を頑張ります」と小田監督。当たりを取り戻した正林も「目の前の試合を全力で戦い抜いてきた結果が、こうやってつながっていると思う。〝残り2試合〟も、気を緩めずにしっかり戦っていきたい」。

 関東一(東東京)と、この夏の〝決勝2戦目〟。その先に見据えるのは、夏の甲子園での鹿児島県勢初優勝という『未踏の頂』だ。