「調査は全く不十分」汚染懸念が尽きなかったセーヌ川でのパリ五輪の競技強行に米専門家が苦言「過小評価する可能性も」

AI要約

パリ五輪ではセーヌ川での競技が物議を醸し、水質問題や安全性に対する懸念が広がった。

選手や専門家からはセーヌ川の水質調査手法や安全性に疑問が呈され、大会組織委員会の対応に批判が相次いだ。

競技は無事に終了したものの、セーヌ川での競技開催は大きな議論を呼び、今後の対策や改善が求められている。

「調査は全く不十分」汚染懸念が尽きなかったセーヌ川でのパリ五輪の競技強行に米専門家が苦言「過小評価する可能性も」

 現地時間7月26日の開幕以来、各競技で熱戦が繰り広げられたパリ五輪。多くの興奮と感動が生まれた一方で、競技場の内外でネガティブな問題が噴出し、不満や批判が渦巻いたのも事実である。

 とりわけ物議を醸したのが、100年も「遊泳禁止」となっていたセーヌ川での競技実施だろう。

 水質問題が取りざたされる中、今大会はトライアスロンの男女個人、混合リレー、男女のマラソンスイミングの5種目を実施。トライアスロンやオープンウォーターの公式練習が中止になったものの、大会組織委員会は全種目をやり切った。

 パリ五輪開催に向け、フランス政府が総額14億ユーロ(約2400億円)という莫大な予算をつぎ込んで水質改善を図ってきたセーヌ川。だが、問題は山積みだった。開幕してからも大腸菌などの細菌濃度が依然として高いという報道が相次ぎ、不安は拭いきれず。アスリートへの配慮に欠けた“強行開催”というイメージは尽きなかった。

 実際に競技に参加した選手たちからも「橋の下を泳ぎながら、良くない匂いを嗅いだし、あまり考えたり感じたりするべきではないものも見た」(ベルギー女子代表のヨリアン・フェルメイレン談)や「運営側は、『水をどう綺麗に保つか』という問題をまったく制御できていなかった」(ノルウェー男子代表のクリスティアン・ブルンメンフェルト談)といった指摘が相次いだ。

 そうした中で、大会終了後に「私たちにとって、より良い水質を取り戻すことができた」と言い張ったパリ市の判断を問題視する声は今も出続けている。

 米紙『Politico』は「オリンピックに出た選手たちは、競技中で見たものについての疑念、病気への不安、さらに悪い噂が飛び交う嵐の中を走り抜けた。パリ市の計画は野心的だが、ごくごく単純なものにすぎなかった」と指摘。「セーヌ川が本当に安全であると証明する検査がどれほど信頼できるものなのかについては疑問が多く残っている」と断じた。

 また、同紙の取材に応じた水質調査の最先端システムを開発する米企業『Fluidion』のダン・アンゲレスクCEOは、大会期間中に独自に計測したセーヌ川の水質について「セーヌ川のようなリスクのある川を測定するには、運営側が行った調査方法は全く不十分だ」と断言。「彼らを全面的に責めることはできない」としながら、こう論じている。

「我々は大会期間中に水質が基準値よりもはるかに上回っていることを確認している。パリ市がオリンピック期間中に導入した一般的なやり方では、水質に対して過度に楽観的な見方をし、大腸菌や(排泄物の)粒子を含むリスクを過小評価する可能性があった」

 選手や各国代表スタッフを含めた専門家から非難の声が相次いだセーヌ川での競技開催。強行的に行ったにも関わらず、大きなアクシデントもなく無事に遂行できたのは、不幸中の幸いとも言えそうだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]