スタート前の「笑顔」も話題に…女子ハードル田中佑美(25歳)がパリ五輪“40人中39位”の崖っぷちから準決勝まで進出できた「必然のワケ」

AI要約

田中佑美はパリ五輪の陸上・女子100mハードルに挑戦し、準決勝まで進出した。初めての五輪において、自分の力を発揮することができた田中は、収穫を感じていた。

決勝進出は逃したものの、予選から準決勝までの3レースで従来の日本人最高記録を更新し続けた田中。大きなチャレンジを成し遂げた彼女は、次なる大会に向けてさらなる成長を目指している。

過去の世界選手権での経験から学びを得て、今回の五輪での成績に満足感を抱いている田中。今後も競技を続け、自身の強化を図っていく意欲を見せている。

スタート前の「笑顔」も話題に…女子ハードル田中佑美(25歳)がパリ五輪“40人中39位”の崖っぷちから準決勝まで進出できた「必然のワケ」

 パリ五輪の陸上・女子100mハードル。その準決勝のスタートラインに田中佑美(富士通)は立っていた。

「楽しい! でも、緊張する……って思った」

 相反する感情を胸のうちに抱きながらも、田中は笑顔を作っていた。

「世界の舞台、そして、オリンピックという大きな舞台で、怯むことなく、自分のやりたいことができたっていうのは本当に大きな収穫だったと思います」

 決勝進出こそ逃したものの、レース後にこう振り返ったように、田中は初めての五輪で躍動した。

 田中にとって今回のパリ五輪は“崖っぷち”からの挑戦だった。

 6月末の日本選手権では、パリ五輪の参加標準記録を突破できず、福部真子(日本建設工業)にも敗れた。ワールドランキングでの出場に望みを託したものの、ボーダーライン付近におり、暗雲が垂れこめていた。

「私はまだ25歳で、これからも競技を続けますし、(パリ五輪の後にも)オリンピックも来ますし、オリンピックが陸上の全てではない。もっともっと強くなれるように頑張ります」

 日本選手権のレース後にこんな印象的な言葉を残したが、その発言はパリ五輪を諦めたと解釈することもできた。

 田中に朗報が舞い込んだのは日本選手権の2日後だった。世界陸連が公表したオリンピック出場資格者のリストには、しっかりと田中の名前があった。

 ワールドランキングは39位。ターゲットナンバー(出場枠)の40にギリギリ滑り込み、パリ行きが決まった。つまり、パリ五輪の出場者の中で“ブービー(下から2番目)”というのが田中のポジションだった。

 そこから這い上がり、本番では敗者復活ラウンドも勝ち上がって、準決勝進出を果たした。

 日本勢として、前回の東京大会の寺田明日香(ジャパンクリエイト)に続く、2大会連続の準決勝。福部も予選を突破しており、この種目で日本人が2人同時に準決勝に進んだのは史上初めてのことだった。

 田中がパリで走った3本のレースは次のような結果だった。

・予選 2組5着 12秒90

・敗者復活ラウンド 3組2着 12秒89

・準決勝 1組7着 12秒91

 田中の自己記録は12秒85だ。自己記録には届かなかったものの、予選の後に「世界大会で自分の力を出すというチャレンジはクリアした」と話した通り、五輪の舞台で持っている力は発揮した。

 また、日本人の五輪最高記録は、福部が今大会の予選でマークした12秒85が新たな記録となったが、それまでは寺田の12秒95だった。つまり、田中もまた、3レース全てで、従来の五輪における日本人最高記録を上回った。

 昨年のブダペスト世界選手権は、田中にとって初めてのシニアの世界大会ということもあって、雰囲気に飲まれてしまった。

「スタートで出遅れてしまって、歯が立たないレースをした」

 世界のトップハードラーに力を見せつけられたばかりか、他の試合では絶対にしないミスをしてしまい、“何しに来たんや”という後悔が胸中に残った。