部員に目配り 「笑顔の主将」からこぼれた涙 鳥取城北・石黒尚選手
鳥取城北の主将、石黒尚が「笑顔を絶やさずに」という信念を持ち、チームを引っ張る姿を見せる
石黒尚は苦戦した試合後、表情の重要性に気づき、笑顔を意識してチームを鼓舞し続ける
マウンドに駆け寄り、チームメンバーに笑顔で楽しむことを伝え続け、鳥取城北を勝利に導く
(12日、第106回全国高校野球選手権大会2回戦 明徳義塾7―0鳥取城北)
鳥取城北の石黒尚(なお)主将(3年)は「笑顔を絶やさずに」と、ずっと思ってきた。だが、最後はこらえきれなかった。
本塁前に整列してあいさつを終えた後、チームメートで親友の米谷太希(たいき)選手(3年)に声をかけられた。「1年間本当にありがとう。(主将が)尚でよかった」。涙がこぼれた。
「笑顔」を意識したきっかけは、鳥取大会初戦の米子工戦だった。思わぬ苦戦となり4―2で辛勝。「硬かった。選手同士の会話も少なかった」と振り返る。
試合後、相撲部の指導者としても知られる石浦外喜義校長から言われた。「お前が表情硬いとみんな硬くなる」
そうだ。自分の一番良いところは笑顔だ。だから、負けムードだった鳥取大会決勝でもずっと笑顔でいた。3点リードされて迎えた九回裏。泣いている選手もいたが、「27個目のアウトを取られるまでは諦めるな」と笑顔でチームを鼓舞した。
大逆転劇で、鳥取大会はついに最後まで「笑顔の主将」でいられた。
甲子園初戦となったこの日もピンチになったとき、マウンドに駆け寄って田中勇飛(ゆうひ)投手(2年)や鈴木欧音(おと)投手(同)に声をかけた。「顔が硬いぞ、笑顔で楽しめ」
でも、笑顔だけで周りは主将に付いてきた訳ではない。マネジャーの足立裕美(ひろみ)さん(3年)はこう話す。
「主将が一番元気で、一番声を出す」「あいさつ、全力で走る、そういう基本を主将が一番大事にしている」。そして「90人以上いる部員の一人ひとりを見ている。1年生のこともきちんと」。
試合後のインタビューでは、ベンチ入りした2年生6人の名前を一人残らず挙げた。「平山であったり、橋本であったり、谷口、田中、鈴木、浜野を中心に、来年は、自分らが出来なかった甲子園での勝利を目指して欲しい」(奥平真也、吉田博行)