GT-Rのエンジンを積むフェアレディZの潜在能力に期待大! GT300クラスの大注目マシンについてドライバーとチームに直撃した

AI要約

2024年のスーパーGTにはホンダ系の有力チームが新型モデル「シビックタイプR-GT」をGT500クラスに投入。また、GT300クラスにはGAINERが新型Zの11号車「GAINER TANAX Z」を投入。

福田氏によると、ZはGTA-GT300車両であり、GT-R NISMO GT3と同じVR38DETTエンジンを搭載。開発は2021年末から進められ、市販車のフレームを活かして製造された。

初期のレースでは冷却やサスペンショントラブルに悩まされたが、セットアップも進められている。熟成を重ねつつ、スーパーGTのレースに臨んでいる。

GT-Rのエンジンを積むフェアレディZの潜在能力に期待大! GT300クラスの大注目マシンについてドライバーとチームに直撃した

 2024年のスーパーGTにはホンダ系の有力チームが新型モデルとして「シビックタイプR-GT」をGT500クラスに投入。当サイトでもマシン解説を行ったことから、ご存じの読者もいると思うが、じつはGT300クラスにも新開発のマシンがデビューしている。

 昨年までニッサンGT-R NISMO GT3でGT300クラスに参戦していたGAINERが、第2戦の富士より新型Zの11号車「GAINER TANAX Z」を投入。というわけで、8月2~5日、第4戦が行われた富士で、GAINERのピットに潜入。技術部門の責任者を務めるチーフエンジニアの福田洋介氏を直撃してきた。

──基本的な話ですみませんが、GT300クラスには国際規定モデルのFIA GT3とスーパーGT独自のGTA-GT300、あとマザーシャシーを使ったGTA-GT300MCと3タイプのモデルがあると思うんですけど、GAINERさんが独自開発した11号車のZはどれになるんですか?

 福田氏:GTA-GT300車両になります。

──昨年までGT-R NISMO GT3で参戦されていましたが、今年はなぜ、Zをベースに独自開発のマシンで参戦することになったんでしょうか?

 福田氏:もともとGAINERはクルマを作ることを前提に立ち上げたチームです。当初は童夢さんの設計したフェラーリでGT300クラスに参戦していたんですけど、2008年にエンジンを変更し、2009年はシャシーを含めてオリジナルのマシンで参戦していました。その後はGTE、GT2、GT3で参戦していたんですけど、あらためて自分たちで走らせるクルマは自分たちで作ろうという思いから、2024年はZを開発して参戦することになりました。

──なぜ、Zがベースだったんでしょうか?

 福田氏:ここ数年はずっとGT-Rを使っていたし、NISMOさんとコミュニケーションをとっていましたからね。GT-Rは新しいモデルが出てこないなか、Zが新型に切り替わったのでNISMOさんと話し合い、ZをベースにGTA-GT300規定でレーシングカーを開発することにしました。

──エンジン開発はNISMOが担当されていると思いますが、搭載されているエンジンは3800ccのV型6気筒ツインターボですよね? GT500クラスのZには2000ccの直列4気筒シングルターボのNR4S24が搭載されていますが、GT300クラスのZのエンジンは確かGT-R NISMO GT3と同じVR38DETTですよね?

 福田氏:エンジン本体はVR38DETTになります。個人的にVR38DETTは世界最強のエンジンと思っていたので、どうしてもGT-R NISMO GT3のエンジンを使いたかったんですけど、GT-RとZでは車格の違いがあって、メンバーの幅が違うので、ターボやエキマニは専用パーツになっています。

──2024年に新型Zを投入するにあたっていつから開発されていたんですか?

 福田氏:企画が立ち上がったのは2021年末で、2022年には設計がスタートしました。当初はパイプフレームをベースにする予定で設計を進めていたんですけど、GTカーの原点は市販車改造ですし、市販車のフレームを活かしても速いクルマが作れるんじゃないか……という思いもあって設計を変更しました。そういったプランの変更もあって時間はかかりましたね。本格的にクルマの製造に着手したのは昨年の冬で、11月の段階ではまだロールケージの合わせを行っている状態でした。

──GT500クラスのZはカーボンモノコックを使用していますが、11号車は市販車のシャシーを使っているんですね?

 福田氏:パーツを収めるためにカットした部分もありますが、基本的には市販のフレームで、フロア、サイドシルも市販車を残しています。クルマの製造という意味ではパイプフレームのほうが簡単ですけど、FIA-GT3車両と同様に量産車両のボディを使うことで衝突安全性が確保できること、同時に若手の技術者を育てたいという部分もあって市販フレームを採用しました。

──なるほど。プラン変更もあって、開幕戦の岡山は欠場されていたんですね?

 福田氏:開幕戦の岡山にもクルマをもっていったんですど、冷却系がまだ完成していなかったので欠場しました。その後、冷却系を仕上げて岡山でシェイクダウンを行いました。

──それで第2戦の富士がデビュー戦だったんですね。たしか、デビュー戦はリタイヤに終わりましたよね?

 福田氏:岡山でシェイクダウンしたんですけど、冷却系が不足していたし、サスペンションまわりも出来上がっていない状態でした。とりあえず第2戦の富士の前にフロントのサードダンパーをつけて、冷却もレースウィークにダクトをつけたんですけど、まだ冷却不足でした。走れはするんですけど、オーバーヒートして何回もピットインを繰り返すとまわりのチームに迷惑をかけちゃうのでリタイアをしました。

──なるほど。で、確か第3戦の鈴鹿もリタイアでした。

 福田氏:冷却系を対策したことで、走れるようになってきたんですけどね。鋭利な突起物がラジエターのチューブに当たって、そこから液漏れしまして、それでリタイアしました。

──いろいろとトラブルがあったようですが、これである程度は熟成されてきたんでしょうか?

 福田氏:第3戦の鈴鹿の後に、SUGOでテストがあったんですけど、冷却系をアップデートしてリヤにもサードダンパーを装着しました。でも、セットアップがまだ煮詰められていない。いまのスーパーGTは走行できる時間が少ないので、レースウィークはセットアップを詰める時間がなくて手探りの状態です。