「ランナーと逆の動きをしました」 創成館エースの完封支えた遊撃手の好守 低反発バット導入で守り勝つ野球にシフト【甲子園】

AI要約

創成館が白樺学園を1-0で破り、守り勝つ野球を展開。エースの村田昊徽が完封し、会心のプレーも見せた。

守備陣の秀逸なプレーが光る場面もあり、内野ゴロ14本を見事に処理。チームは守りを重視し、堅実な野球を展開している。

次戦に向けてもチームは守りを貫き、バッティングでも貢献したいと意気込んでいる。

「ランナーと逆の動きをしました」 創成館エースの完封支えた遊撃手の好守 低反発バット導入で守り勝つ野球にシフト【甲子園】

 ◆全国高校野球選手権1回戦 創成館1―0白樺学園(11日、甲子園)

 創成館が、自分たちの持ち味を存分に出した好ゲームだった。3回、白樺学園の失策が絡んでの1死三塁から、2番の主将・向段泰一郎の左犠飛で挙げたその1点を、エース・村田昊徽が三塁を踏ませずの6安打完封で守り抜き「もうちょっと打てよ、とは思うんですけど、こういう試合をずっとやってきましたので、選手はそれなりの自信を持っているというところはあるんじゃないかと思います。今はこういう(低反発の)バットになって、特にこういう展開を予測してやっていますから」と稙田龍生監督。まさに想定通り、そして理想通りともいえる「1―0」での初戦突破。その〝守り勝ち〟を象徴する、会心のプレーが飛び出したのは4回のことだった。

 3回に1点を先制した直後の4回、2死二塁の同点のピンチを迎えての守備だった。打席の上一颯は北北海道大会6試合で打率3割5分3厘、6打点の勝負強い左打者。その2球目、捕手・小副川朋也が外角寄りにミットを構え、ストレートを要求。「スイングとかを見て、センターラインに来そうだなと思った」というショートの小森山仁は、投手のモーションに合わせて、二塁走者は三塁方向に動くのだが、ショートは普通なら「三遊間側に開く」のだが、その逆、二塁ベース方向へ動いたのだ。

 左打者が逆方向に流した当たりなら、スライス回転で、三塁方向に切れていきがちになる。だからショートは、二塁走者をけん制しながら、投手がモーションに入ると、走者の動きに合わせて三塁方向へ動き、さらに打者が見えるよう、走者にかぶらないところまで三塁側へ寄るのが〝セオリー〟でもある。それでも小森山はあえて「ランナーと逆の動きをしました」。その読みが、恐ろしいばかりに的中する。

 上の放った強烈なゴロが、二塁ベース方向へ真っすぐ伸びていく。稙田監督ですら「センター前に抜けたかな、と思った」。その瞬間、二塁ベース前に、小森山がいた。長崎大会5試合で無失策の堅守でリズムよく処理して一塁へ送球。あわや同点、のピンチを無失点で切り抜け「はまって、うれしいですね。これに関しては、結構満足しています」と小森山。守備位置はベンチからの指示ではなく「彼らが相手の映像をよく見て、どういう打球の方向かということは分かっていたと思います」と稙田監督。終わってみれば、チーム無失策。9回の二ゴロ併殺を含めて内野ゴロ14という、村田の打たせて取るピッチングを、見事なまでの堅守で支え切った。

 開幕前に行われた今月4日の甲子園練習。20分間の割り当てを、創成館は守備練習だけに費やした。内外野に分かれてのノックの後、内外野の連携、内外野の間に落ちる飛球の処理、さらに内野のノックをしながら、外野ではフェンスのクッションボールの跳ね方を確認、フェンス前で外野手がジャンプしてその高さも確かめるという、微に入り細に入り、とばかりに徹底した守備練習は、低反発バットになって長打は少なくなり、今大会も5日を終えていまだ本塁打0。得点圏に走者がいても、外野手が大胆な前進守備を敷くようになり「ランナーを二塁に置いても、ヒット1本でホームにかえってこられない」と稙田監督。創成館も長崎大会5試合でのチーム打率は2割5分5厘、本塁打も0と、連打や大量得点が期待できないゆえに、守り勝つ野球にシフトするのは必然。普段の個人練習でも守備に時間を割く選手が大半だといい、チームが掲げるスローガンは「苦戦しても敗戦しない」。だからこの日の1―0のスコアは「一番いい勝ち方かな、と思いますね」と稙田監督。甲子園初戦で、まさに会心の勝利というわけだ。

 2回戦の相手は、センバツ準V・報徳学園(兵庫)を倒した大社(島根)。「相手も勢いがありますからね。ウチも負けないように、しっかりと頑張ります」と稙田監督が言えば、好守でチームを支えた小森山は3番打者として無安打だったこの日を踏まえ「次はバッティングでもチームに貢献したいです」。派手さには欠けるが、この堅実な守り勝つ野球で、まずは過去3度の夏の甲子園で未達成の「1大会2勝目」をつかむつもりだ。