夏の甲子園で「白」目立つ 暑さ対策で黒の伝統ユニホーム一新

AI要約

今年の夏の聖地、第106回全国高校野球選手権大会では多くのチームが熱中症対策としてユニホームやヘルメットを白に変更している。新たなスタイルがトレンドとなるか注目される。

広陵(広島)など複数のチームが黒から白への装い変更を行い、暑さ対策として白で臨むことを選択した。中井監督や只石主将がその効果を実感し、選手の健康を最優先に考えた。

白のヘルメットに変更するチームが増えており、高校野球界でも暑さ対策として白を取り入れる動きが広がっている。ミズノによると、白のヘルメットが人気を集めており、暑さ対策に効果があるとされている。

夏の甲子園で「白」目立つ 暑さ対策で黒の伝統ユニホーム一新

 今夏の聖地には「白」が目立つ。7日に阪神甲子園球場で開幕した第106回全国高校野球選手権大会。複数の出場校が熱中症を避けるために、ユニホームやヘルメットなどを白に変更し、新たな装いでグラウンドに立っている。「サマースタイル」は高校野球の新たなトレンドになるか。

 春夏通じて甲子園通算52回の出場を誇り、センバツ優勝3回の広陵(広島)は今夏の甲子園大会に向けてユニホームを新調した。伝統だった黒の帽子やアンダーシャツを白に変えた。打者と捕手用のヘルメットも同じように白に変更したという。

 7月の広島大会は従来の黒色スタイルで臨んだが、長くチームを率いてきた中井哲之監督(62)が甲子園大会前に決断したという。理由があった。

 練習で中井監督が使い古した黒のヘルメットを白のスプレーで塗装したところ、表面温度に明らかな違いがあることに気付いたという。中井監督は「(日差しのある中で)ヘルメットを地面に置いておいたら、黒は熱くて触れなかった。でも、白は触れた。(そんな暑い中で)黒のヘルメットをかぶる理由がどこにあるのか、と思った」と説明する。捕手の只石貫太主将(3年)も「(捕手用の)ヘルメットは熱がこもらない感じがある」と実感する。

 伝統校ゆえの悩みもあった。中井監督は「歴史があるチームなので(白のヘルメットが)似合うとか似合わないとか、いろいろな意見が出るかもしれない」と批判も覚悟した。それでも「昔とは暑さも違うし、(暑さ対策で選手のために)できることをやってあげるのは当然のこと。伝統や歴史というのは心構えが大事であって、形ではない」と考え、学校関係者らとも相談の上、選手たちの健康面を最優先に決断した。只石主将も「ユニホームが変わっても、やることは変わらない」と話す。

 白の道具に変更するチームは増えている。初日に出場した英明(香川)と岐阜城北は、暑さ対策でいずれも黒だったヘルメットを甲子園に合わせて白に変更した。第5日に登場する白樺学園(北北海道)も、北北海道大会で黒だったヘルメットを白に変えて臨む予定だ。

 スポーツ用品大手「ミズノ」によると、高校野球のヘルメットの出荷率で、2019年に全体の約15%だった白が20~30%前後にまで増え、およそ半数を占める紺に次ぐ2番人気に上昇した。黒は3番目だった。変更理由は「暑さ対策」がほとんどだといい、担当者は「本当に暑い中なので、対策になるならぜひ使ってもらいたい」と話している。

 日本高校野球連盟は暑さ対策で20年から、黒しか認めてこなかったスパイクの白を認めている。今大会からは塁審も白の靴を履くようになった。ミズノの調査では、白のスパイクでは黒に比べて炎天下での表面温度が約20度、内部温度が約10度低くなるという。【吉川雄飛、下河辺果歩】