「3年間、しんどかった」阿部一二三を圧勝劇の金に導いたのは…最強ライバルの存在、井上尚弥から得たもの、詩にかけた言葉

AI要約

阿部一二三が男子柔道66kg級で五輪連覇を達成し、圧倒的な柔道を披露した。

苦しい練習や競争を乗り越え、連覇を果たした阿部は、東京五輪後も世界最強を証明し続けた。

強さを示すために言葉に託したプレッシャーを受けつつ、技の磨きを進める阿部は、内面からも圧倒的な強さを見せ続けた。

「3年間、しんどかった」阿部一二三を圧勝劇の金に導いたのは…最強ライバルの存在、井上尚弥から得たもの、詩にかけた言葉

 圧巻だった。

 男子柔道66kg級の阿部一二三は、圧倒的な柔道で、堂々、五輪連覇を達成した。

 阿部にとっての初戦となった2回戦でベンツェ・ポングラツ(ハンガリー)、準々決勝ではヌラリ・エモマリ(タジキスタン)から一本勝ちをおさめる。

 準決勝は世界ランキング1位のモルドバのデニス・ビエルと対戦。ゴールデンスコアに払い腰で技ありを奪い決勝進出を決めると、決勝ではウィリアン・リマ(ブラジル)から技ありを奪い、すぐさま袖釣り込み腰で合わせ技一本。得意とする担ぎ技に足技も交え、受けでも強さを発揮。敗れる要素を微塵も感じさせなかった。

 東京五輪で優勝して以来、パリを迎えるまで無敗を誇った。その成績が物語るように、大会で見せる柔道に一切の曇りはなかった。大会のたびに語る言葉もただただ、前を見据えた強い気持ちが込められていた。

 だが、連覇を果たした阿部は言う。

「重圧だったりプレッシャーは東京のときよりあったし、正直、3年間苦しい思いの方が多かったです」

 いちばん苦しかったのは「練習です」と言う。

「練習とトレーニングがしんどかったし、してもしても不安で、『大丈夫かな』『強くなってるのかな』と思っていました」

「(不安は)東京で金メダルを獲ってすぐの試合からですかね。22年の世界選手権も、23年の世界選手権も。周りの方は『圧倒的だな』と思われたかもしれないですけど、全然そんなことはなくて、ライバルと競ってこの舞台を手にしたし、決して簡単な道ではなかったなと思います」

 連覇を果たし世界最強をあらためて示した阿部だが、東京五輪の代表になるのも容易ではない時期があった。ライバル、そう丸山城志郎の存在である。

 東京五輪の代表争いでは一時、丸山がリードしていた。丸山が代表の座をつかみかけた瞬間すらあった。そこから追いついたものの優劣がつかず、両者による異例の代表決定戦を実施。24分の死闘の末勝利し、代表をつかんだ経緯がある。

 そこで競争が終わったわけではなく、東京五輪後も丸山との勝負は続いた。連覇を果たした2022年、2023年、両世界選手権の決勝の相手も丸山だ。世界で最も強いライバルが国内にいて、まずはそこで強さを示し続け、より強くなったことを示す必要があった。

 その中で、内面はどうあれ、「圧倒的な強さを見せる」と言葉に出して自らを鼓舞してきた。自らにかけたプレッシャーでもある言葉を体現するための練習を自らに課した。担ぎ技を磨く一方で、足技の習熟にも力を注いだ。技に加え、筋力の強化も図った。ボディービルの専門誌で表紙となり特集されるほど鍛え上げた。