【柔道】角田夏実「好きな人」とつかんだ初五輪の金メダル 間違っていなかった「家族」との道

AI要約

日本柔道の女子最年長31歳11カ月で初出場した角田夏実が、五輪で日本の夏季通算500個目のメダルを獲得し、金メダルを手にした。

角田は世界選手権3連覇中の女王として、信じた武器である「ともえ投げ」と「関節技」を駆使して念願の金メダルを獲得した。

角田の武器となるともえ投げと十字固めは、通算5試合中4試合で勝利に貢献し、長年の努力が報われる形となった。

【柔道】角田夏実「好きな人」とつかんだ初五輪の金メダル 間違っていなかった「家族」との道

<パリオリンピック(五輪):柔道>◇27日(日本時間28日)◇女子48キロ級◇決勝◇シャンドマルス・アリーナ

 【パリ28日=木下淳】日本柔道の女子最年長31歳11カ月で初出場した角田夏実(SBC湘南美容クリニック)が、日本の夏季五輪通算500個目となるメダルを、今大会「金」第1号で彩った。世界選手権3連覇中の女王が、5戦中4戦で勝利につなげた「ともえ投げ」と「関節技」。信じた武器が、念願の頂点に導いてくれた。

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 優勝の直後は控えめだった角田も、金メダルを手にすると涙がこぼれた。女子最軽量級で谷以来20年ぶりの金メダル。「重圧に弱いので目を背けてきたけど…(笑い)。偉大な方に近づけるのか怖さと不安があったけど、つなげてよかった」と喜んだ。今月15日、最終調整で号泣しながら不安を打ち明けた今井優子コーチとも試合後に対面。また泣いて抱きしめ合った。

 圧巻は準々決勝。地元フランスの25歳ブクリを、大歓声下で、開始1分で仕留めた。代名詞ともえ投げ。決勝も、必死にかがむ相手を引っこ抜くように、強引に蹴り上げ突き落とした。

 小学2年の時、父と柔道を始めた。自宅に敷いた畳の上で関節技の遊びを始め、ともえ投げは高校時代に同じく父から教わった。通常、ともえ投げは左組みの場合、右足で相手の股関節を蹴るが、角田は左。これは講道館柔道の「形」と同じ。古来の柔道を、世界で体現してみせた。その武器を本人は「好きな人」と表現する。腕ひしぎ十字固めとの連動戦法は世界中から研究されているが、どれだけ相手が腰を引こうが、「自分を信じ、どれだけ対策されても、ともえと十字で戦っていくと決めていた」と愛した。決勝までの5試合中4試合、ともえ投げでポイントを奪い、うち「家族」と呼ぶ十字固めで一本を初戦から2つ。通ってきた道は合っていた。

 腕力も2階級上の63キロ級と渡り合い、ベンチプレス80キロは女子最軽量級では最上級。加えて女子では珍しい体脂肪率1桁台を誇る。そこに技術があり、長身161センチの手足の長さがある。世界選手権3連覇も全大会オール一本勝ちで成し遂げた。

 無双Vにも、両膝の痛みに悩まされていたことを思い返した。「(延長戦に持ち込まれた)準決勝の後、もっと練習して試合に挑みたかったな、と。引退かなと思ったけど、どうなるんだろう。ゆっくり休んで考えようかな」。来月6日に32歳の誕生日を迎えるが、万全なら、まだ強い姿を見せられる-。衰えぬ向上心が、女王を28年ロサンゼルスまで導くかもしれない。