大盛況の日韓OB戦、企画から運営までケチのつけようがない興行を1球団が開催/寺尾で候

AI要約

エスコンフィールド北海道で開催された「日韓ドリーム プレーヤーズ ゲーム」が大成功をおさめた。

新千歳空港からJR快速を乗り継いで最寄りの北広島駅で下車した際、大勢のファンと出会い、日本ハムの主催で実現した国際大会の興行の成功に驚いた。

日本ハムのフロンティア精神と野球振興への取り組み姿勢が示され、未開の地におけるプロ野球の歴史への敬意と感謝が表された。

大盛況の日韓OB戦、企画から運営までケチのつけようがない興行を1球団が開催/寺尾で候

<寺尾で候>

 日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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 エスコンフィールド北海道で開催された「日韓ドリーム プレーヤーズ ゲーム」が大盛況だった。

 WBC、五輪などに参加した当時の代表選手が、北の大地を舞台に戦ったのだ。

 新千歳空港から、JR快速を乗り継いで最寄りの北広島駅で下車すると、大勢のファンと鉢合わせになった。韓国でもチケットが購入できたし、Japanツアーを組んだ応援団も気合十分のエスコン入りだったのだ。

 そのビッグネームがそろう国際大会は、プロ野球をつかさどるNPB(日本野球機構)が主導して実現したわけではなかった。チームが集中する東京でも、大阪でもない。日本ハムの「ファイターズスポーツ&エンターテイメント」の主催だった。

 球団がOB戦を組み、新聞社が日米野球を招へいするなど前例はある。しかしレジェンドとはいえ、球団が単体で“国際大会”を開催するのは珍しい。しかも2万9000人を集客し、韓国チアリーダーとファイターズガールのキツネコラボレーションなど、企画から運営までケチのつけようがない興行だった。

 昨年11月に韓国サイドから好感触を得たことが契機になって、イベント開催にこぎつけた。もっとも苦労した日韓メンバーの確保から、WBCの了解をとりつけ、ビザ発給、移動、宿泊施設に至るまでを、1球団でやりきったのは異例といえるだろう。

 現場で感じたのは、未開の地にプロ野球を根付かせ、その歴史を築いてきた先人たちへの敬意、感謝を込めた日本ハムの熱い思いだ。そのフロンティア精神と、近い将来は懸念される野球振興の課題に取り組む姿勢を示したともいえる。

 そういえばエスコンフィールド開場前、ファウルゾーンが公認野球規則の規定に違反していると指摘された際、当時コミッショナーの斎藤惇が「欠陥球場」と発言したことがあった。NPBから「誠意ある金額」を求められた日本ハムは「野球振興協力金」という名目の“ペナルティー”として3億円超を上納した。

 その欠陥球場のエスコンフィードが、野球振興に一役買って、当初の赤字覚悟が収益までもたらしたのは皮肉なことだった。最新球場に初めて足を踏み入れた、全日本監督の原辰徳、投手コーチを務めた山田久志ら、世界で戦ってきたレジェンドも「開放感のある素晴らしい球場だ」と口をそろえた。

 日韓は“永遠のライバル”として盛り上がってきた。原は「これが次回に続くようになれば、野球界が発展している証しになる」という。当初はWBCも“花相撲”と揶揄されたことを思えば、いつか振り返ったとき、この一戦が歴史の出発点になるかもしれない。(敬称略)