【F1第13戦決勝の要点】ピアストリの嬉しい初優勝に水をさしたマクラーレンの稚拙な判断と残念なゴタゴタ

AI要約

2024年F1第13戦ハンガリーGPでマクラーレンのオスカー・ピアストリが初優勝し、チームメイトのノリスも2位に入り、ワンツーフィニッシュを達成。

ピアストリとノリスの順位をめぐるチームオーダーのゴタゴタや、ノリスの拒絶反応があったものの、最終的に順位を入れ替えてフィニッシュ。

ピットストップタイミングやスタート時のミスなど、レース中の各ドライバーの戦略やミスが結果に影響し、展開が変わったレース。

【F1第13戦決勝の要点】ピアストリの嬉しい初優勝に水をさしたマクラーレンの稚拙な判断と残念なゴタゴタ

 2024年F1第13戦ハンガリーGPの決勝レースにて、オスカー・ピアストリがF1初優勝を飾った。チームメイトのランド・ノリスも2位に入り、マクラーレンは2021年第14戦イタリアGP以来となるワンツーフィニッシュを遂げた。

 ポイントリーダーに君臨するマックス・フェルスタッペン(レッドブル)を実力でねじ伏せ、前戦シルバーストンのようなパワーサーキットから低速のハンガロリンクまで、あらゆる特性のコースでもマクラーレンのマシン『MCL38』が速いことも証明し、現時点で最強のマシンであることが、今回改めて周知されたと言える。

 それゆえに、レース終盤に巻き起こったピアストリとノリスの順位をめぐるゴタゴタは残念だった。

 発端は46周目だった。スタートで首位を奪ったピアストリがノリスを1~2秒後方に従えるかたちで周回を重ねるなか、チームはノリスに先に2度目のピットストップを指示した。

 タイヤのデグラデーション(性能劣化)が大きいハンガロリンクでは、先にフレッシュなタイヤに履き替えた方が有利だ。その理論を証明するかのように、2周後の48周目にピットに向かったピアストリは、ノリスの約3秒後方でコースに復帰。ピアストリはチームメイトにアンダーカットされてしまうかたちとなった。

 するとチームはノリスに対し、「後ろにいるオスカーを、本来の順位に戻してあげよう」と、首位を譲るよう指示を出した。「わかった」と答えたノリスだったが、その言葉と真逆の走りでペースを上げ、3秒ほどだったピアストリとのギャップを、終盤66周目には6秒まで広げていた。

 ノリスの担当エンジニア、ウィル・ジョセフは「タイヤを使いすぎてるぞ」、「今朝のミーティングで話したことを思い出してくれないか」と、あくまでやんわりと順位を譲るようノリスに頼み続ける。しかし、ノリスの答えは「彼に“追いついてよ”と伝えてくれ」だった。

 それでもチェッカーまで残り3周となった68周目に、ようやくノリスはピアストリにラップリーダーの座を譲った。その後もDRSを使ってしばらくはピアストリの背後に付いていたのは「勝つべきは僕だった」と言いたかったノリスのせめてもの意地だったのだろうか。

 レース直後のヒーローインタビューでインタビュアーを務めたのは2016年のF1ワールドチャンピオンのニコ・ロズベルグだった。かつてメルセデスでルイス・ハミルトンとタイトル争いを繰り広げ、激烈なチームメイトバトルの末の同士打ちも辞さなかったドライバーだ。

 そんなロズベルグが「ちょっと酷なチームオーダーだったんじゃない?」と、ノリスに問いかけたのは当然だった。しかしノリスはすでに吹っ切れていたのか、あるいは悔しさを押し殺していたのか、少し笑顔を浮かべながら「チームから、そうしろと言われたからね」と答えていた。

 こんなことになってしまった元凶が、46周目のピットストップにあるのは明らかだろう。もし先にあのタイミングでピアストリをピットに呼んでいたら、首位ピアストリ、2番手ノリスの順位は変わらず。また、大いにプライドを傷つけられたノリスを、担当エンジニアが必死に説得する必要もなかった。

 ただしノリスも、スタート直後の攻防は大失敗だった。背後のピアストリを意識するあまり斜めに寄せて行き、フェルスタッペンにも抜かれて一時は3番手に後退。スペインGPの再現のような、あのミスがなければ楽に2勝目を挙げていた可能性は十分にあったとも思う。

 ただ、スタートに目をつぶり、タイヤの持たせ方など、レース運びの巧さという点では、ノリスはピアストリをまだまだ凌いでいる。現時点で最強のマシンに乗りつつも、悔しいレースが続くノリスだが、今後どのレースで勝ってもおかしくない、“勝てるドライバー”の仲間入りを果たしたことは間違いないだろう。

[オートスポーツweb 2024年07月22日]