【相撲編集部が選ぶ名古屋場所9日目の一番】またも低い相手に引いて墓穴。大の里、連勝4でストップ

AI要約

大の里が豪ノ山に押し出されて4敗目を喫し、立ち合いでの差が浮き彫りになった。

豪ノ山は勝ち星を積み重ね、立ち合いからの攻めが健在であることが確認された。

大の里は今場所が正念場であり、大関昇進に向けて10勝以上が必要な状況にある。

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所9日目の一番】またも低い相手に引いて墓穴。大の里、連勝4でストップ

豪ノ山(押し出し)大の里

またも低いところから押して起こしてくる相手に、引いて墓穴を掘ることになった。

 

5日目から4連勝と、調子を戻してきたかに見えた大の里が、豪ノ山に押し出されて4敗目を喫した。

 

この日の相手の豪ノ山には、大の里は3月場所は当たったあと右差しに成功して寄り切り、5月場所も互角の当たりから突きでもっていって押し倒しと、過去一度も相手に先手を許すことなく圧勝していた。

 

しかし今場所は当たり負けた。大の里の当たりがこれまでほどではなかったのか、あるいは豪ノ山の当たりがこれまでよりよかったのか。もしかしたらほんのちょっとしたタイミングの違いなのかもしれないが、今場所はスピード、低さ、角度、すべて豪ノ山の立ち合いが上回った。

 

立ち合い直後、大の里のノドの辺りを突いて起こした豪ノ山の攻めも効いた。上体を起こされた大の里は、思わず右からの引き。ここからは低い力士にやられるときの悪いパターンで、そのまま一気に押し出された。

取組後、「立ち合いで起こされた?」の問いには、「どうですかね」と大の里。低い相手に引いてしまって墓穴を掘るというのは、おそらくはその前の段階で起こされてしまうこと、さらにはその前の当たったときの腰の高さなどに起因するのだろうが、このあたりのちょっとしたところが、もしかしたら先場所までとは少し違っているのかもしれない。

 

一方の豪ノ山は、「前に攻めていたんで、よかったです。当たり負けしないようにと思った。(大の里は)強いので、負けたくない」と、負けん気をのぞかせながら、会心の相撲を振り返った。星はこの日で3勝目だが、豊昇龍を突き出した相撲や、琴櫻をあと一歩まで追い詰めた一番など、今場所も立ち合いの強い当たりからの攻めは健在で、上位戦でも“立ち合いハマれば勝てる”という強さは見せている。あとは照ノ富士戦、阿炎戦など、懐の深い相手に廻しを許すケースがあるので、このあたりの対策が上位での勝ち越しのためのカギだろうか。

 

大の里はこの日で4敗目と、入幕以来、9日目時点では最も苦しい星になったが(そもそも大の里は1場所の最大負け数が4で、5敗以上したことがない)、自分より格上の上位戦はこれからだ。

 

あすはまず大関琴櫻との対戦。ここまではこれまでの場所に比べていま一つ、という感もある大の里だが、むしろ上位戦のほうが、本来の思い切った当たりを取り戻すきっかけになる可能性もある。「またあしたですね。一日一番、集中して頑張ります」と大の里。何のかんの言っても、関脇以下で、横綱・大関陣を倒せる可能性が最も高いのはこの力士であり、白星街道を走る照ノ富士に土をつけられる可能性を最も多く秘めているのも、やはりこの力士だ。そういう意味では、今場所無風の優勝戦線に、台風の目となって刺激を与えられる存在の一番手であることは確か。後半の場所の盛り上がりのためにも、ここから暴れてほしいところだ。

 

また(ここで星勘定をしても仕方がない、という面もあるが……)、近い将来の大関昇進のためには、今場所も何とか二ケタ10勝には星を届かせておきたいところ。今場所9勝以下だと、また優勝するぐらいの大爆発がない限り、大関までは半年かかることになる。

 

相撲の内容的な面、そして星勘定の面。実はいろんな意味で、大の里にとって、今場所ここからの後半戦は、正念場だといえる。

文=藤本泰祐