埼玉を代表する左腕対決! 山村学園・西川歩と大宮東・富士大和の投げ合いは西川に軍配、プロ目指す富士の課題とは…【24年夏・埼玉大会】

AI要約

山村学園と大宮東の激戦を猛暑の中で展開。両エースの投げ合いから始まり、山村学園が先制点を挙げる。

山村学園は打線が連打で得点を重ね、大宮東を4-0で破りベスト16進出を果たす。投手陣もリレーで相手打線を封じ込めた。

大宮東は主将の冨士が悔しい完投負けを喫し、打線も山村学園の投手陣に苦しめられた。冨士は今後の課題として左打者対策を持ち越す。

埼玉を代表する左腕対決! 山村学園・西川歩と大宮東・富士大和の投げ合いは西川に軍配、プロ目指す富士の課題とは…【24年夏・埼玉大会】

<第106回全国高校野球選手権埼玉大会:山村学園4-0大宮東 >20日◇4回戦◇県営大宮球場

 猛暑の中、行われた県営大宮球場・第1試合は、最激戦ブロック、プロ注目最速146km左腕・西川歩(3年)擁するBシード・山村学園 vs 同じくプロ注目最速144km左腕・冨士大和(3年)を擁する大宮東が激突。

 先発は大宮東がその冨士、一方の山村学園は西川を後ろへ回す選択もあったが西川先発と西武ライオンズジュニアユース出身の両エースが登板し試合が始まる。

「初回はボール自体は悪くなかったんですが、力みや緊張があった」(冨士)

大宮東・冨士に対し、

「今日は球速を意識してなくて。相手が冨士なので無駄な四球は出したくないと思って、打たせて取る投球を意識した」

とは山村学園・西川。試合は初回から両エースの明暗分かれる展開となる。

 山村学園は初回、立ち上がりややボールが上ずる大宮東・冨士に対し、一死から2番・横田蒼和(2年)が死球で出塁すると、続く藤原将輝(3年)を迎えた所で冨士は執拗に一塁へ牽制球を放る。だが、その牽制が悪送球となり一走・横田は一気に三塁を奪い一死三塁とする。ここで藤原がセンター前タイムリーを放ち幸先良く1点を先制する。

 対する大宮東もその裏、山村学園・西川の立ち上がりを攻め、二死から3番・野内俊佑(2年)がライトへの二塁打を放ちチャンスメイクするが、後続が倒れ無得点に終わる。

 2回以降は両投手落ち着きを取り戻し、大宮東・冨士はこの日の最速140km、一方の西川は最速144kmを計測。互いに持ち味である直球を武器に相手を抑え込みにかかる。

 だが、山村学園打線は3回表にも二死から1番・田中大貴(3年)が死球で出塁すると、すぐさま二盗を決め二死二塁となる。ここで続く横田が低めの変化球をレフト線へ芸術的なタイムリーを放ち2対0とする。

 流れを掴んだ山村学園は、4回表もこの回先頭の藤原が直球を捉えライトフェンス直撃の二塁打を放ち出塁すると、一死後、5番・吉田翔大悟(3年)が低めの変化球を右中間へタイムリー二塁打を放ち早くも3点差をつける。

 山村学園は5回表にも、この回先頭・西川のセンター前ヒットを足がかりとし、2番・横田のレフト前ヒットでチャンスを広げ、続く藤原がライト前タイムリーを放ち4点差をつける。

 すると山村学園ベンチは、この日の異様な暑さと最激戦ブロックの先を見据え、エース西川は4回でお役御免。5回からは青木孔志(3年)がマウンドへ向かう。7回からは左腕の中嶋瑞樹(3年)が登板し大宮東打線を退ける。

 一方の大宮東・冨士も6回以降は立ち直り、強打の山村学園打線をパーフェクトに抑えるなど本来の自分を取り戻す。

 結局猛暑の中、9回131球完投し被安打78奪三振4失点とまとめた。

 だが、時すでに遅し。

 山村学園投手陣は先発・西川が4回被安打1、3奪三振無失点、青木が3回被安打1、3奪三振無失点、中嶋が2回無失点と大宮東打線を3投手による完封リレーで封じる。4対0で大宮東に勝利しベスト16進出を決めた。

 まずは山村学園、この日打線は大宮東・冨士対策をきっちりと徹底し遂行した。

「右打者のアウトコースはシュート回転するので打てないから手を出さないように。ただそこまで制球は良くないので、そこを狙って中に入ってくるボールがある。そのボールを体の前で思い切り引っ張れと。左打者はアウトコース中心の攻めなので長くボールを見る意識でそこを狙って甘く入ってきたものをピッチャーの足元へ打てと。西川は良かったですが、暑かったので4回で降ろせたのは今後の展開を考えても大きい。打者にはとにかく序盤に3点取ってくれと。今回はとにかく甲子園を狙っているので。西川、西川で行っていたら、もし花咲徳栄の所まで行っても勝てない。だから大きい。他の投手も良くなってきているので代えやすくなっている。ただ、西川と上位打線だけでは甲子園に行けないので発破はかけているんですが」(岡野監督)

と、大宮東・冨士対策はバッチリ嵌った。右打者は打てなかったが、特にこの日は全ヒットが左打者であり、左打者が冨士を攻略していった。最激戦区ながら西川を休ませることもでき、このブロックを勝ち上がるため明るい兆しが見えた。西川も

「万全な状態で。意識するなと監督には言われていたんですが、自分の中でもどうしても冨士を意識してしまう所があった。開会式では『お互いそこまで勝ち上がって戦おうと』。1本打ったんで直接対決では勝ちました(笑)」(西川)

と、まだまだ状態を上げてくるであろう。とはいえ、次の相手は聖望学園だ。楽観はできない。一戦必勝は続く。

 一方の大宮東は

「西川君の速球に対し有効な対策は取ってきました。西川君のボールを良い感じで捉えていたんでスコアリングポジションを作って相手を崩して行きたかったんですが。うちも大黒柱の冨士で行ってロースコアの接戦に持ち込みたかったんですが、初回が全て。ただ、良い時も苦しい時も彼を中心に作ってきたチームで全力を尽くした結果ですから受け入れます。これまで場数は踏ませてきてバッテリーが選択したボールですので。渾身の131球だったと思う。冨士はマウンドだけではなく主将として人間的に大きく成長した2年半だった。チーム全体を意識して背負った経験値を今後の人生にどう活かせるか」(飯野監督)

と、埼玉県屈指の好投手・冨士擁する大宮東が早すぎる終焉を迎えた。ここでの敗戦は痛恨であろう。ただ、監督は主将を労った。冨士も

「2段モーションはそっちの方がしっくりくるので取り入れた。西川とは開会式の時に話して『良い試合にしよう』と。

もちろん西川に対して対抗心はありましたし、初回は力みや緊張と牽制悪送球で慌ててしまい抜けてしまい焦りから崩れてしまった。ボール自体は悪くなかったんですが、浮いた変化球を打たれていて、終盤は立てないせたんですが、序盤は立てなおせなかったのが反省点。左打者には抜けた直球や甘く入った変化球を打たれて。自分が崩れて負けてしまったのは悔しい。春季大会敗退後に喧嘩することもあったんですが、最後は良い雰囲気で大会に入れていたので自分が打たれたことが全て。主将になった当初は自分が動こうとし過ぎて、自分のことに手がつけられなくなって。任せることも大切だなと。初回が一番大事って自分でわかっていたんですが、初回に点が入ってしまって自分達がリズムに乗れない要因になってしまった。今後はプロで。そのために立ち上がりや変化球の精度。直球は終盤空振りを取れていたので、変化球が入らず直球を狙い打たれた。セールスポイントはMAX144kmの直球。この一年下半身の連動性の再確認や少し体重を増やして5kmほどupしました。今日も終盤でも直球で押していけたのでそこが強み」

と、悔しさを滲ませるも、前を見据える冨士。この1年は、新チーム結成時点からとにかく打線で苦しんだ。中学生時代から目立つ存在であっただけに埼玉県内では冨士包囲網を敷かれ研究され厳しい1年間であったはず。それでもエースで主将の大黒柱として文句ひとつ言わず踏ん張った。性格的にも真面目で好青年。いざプロへと言いたい所だが、左打者対策という課題が残る。左打者のインコースに投げきれない部分をこれからの期間でどう解決するのか。評価は分かれそうだが、腕が長く天性の腕の振り、柔らかさを持っているだけに可能性を秘めている。今後に注目したい。